平均値定理


ここの page で頻発する 「連続 continue」 という言葉は, 正式な解説を必要とする言葉ではあるが, とりあえず 「グラフがつながっている」 という意味に理解しておいてもらうことにする。

定理 [Rolle (ロル)]

函数 f(x) は区間 [a, b] で連続, (a, b) で微分可能とする。 この函数が f(a) = f(b) という条件を満たすのであれば, a < c < b という定数 c が存在して, f'(c) = 0 になる。

証明は f(a) = f(b) = 0 とする場合について行う。 先ず [a, b] で f(x) > 0 となる点が存在するとすれば, f(x) が連続であるから, 最大値が正である。 その最大値が a < c < b となる c のところで得られるとして f(c) が最大値であるとする。 h ≠ 0 として f(c + h) を考えよう。 すると f(c) が最大値だから f(c + h) - f(c) ≦ 0. 従って

h > 0 ならば (f(c + h) - f(c))/h ≦ 0. h→+0 (下注参照) として f'(c) ≦ 0.
h < 0 ならば (f(c + h) - f(c))/h ≧ 0. h→-0 (下注参照) として f'(c) ≧ 0.

よって, f'(c) = 0.

f(x) ≦ 0 ならば, 最大値の代わりに, 最小値に関して同じ議論をすればよい。

さて次に f(a) = f(b) ≠ 0 のときは, f(x) の代わりに F(x) = f(x) - f(a) を考えれば F(a) = F(b) = 0 だから同じことがいえる。■

注:

[a, b] で連続な函数がそこで最大値と最小値をとる, ということは証明を要することであり, しかも証明できる。 ところがこれはとても難しいので, ここではそのこと迄に深入りはしない。

h→+0 とは h > 0 としながら h を 0 に近づける (又は超実数の無限小 +0 を代入する) ことであり, h→-0 とは h < 0 としながら h を 0 に近づける (又は超実数の無限小 -0 を代入する) ことである。 細かいことはあとで詳しく説明する予定である。 良く分からなければ要するに符号を考えながら h を段々小さくして 0 に近づけるのだと思っておいてかまわない。

微分法の平均値定理は「微分学における最も著しい成果の一つ」等といわれてもいるが, 要するに, 有限な区間で両端点を結ぶと, それと傾きの等しい接線が, どこか間の所で引けるということだけである。

細かいことを説明してないので, 下記の拡張のうちで分からないこともあるかもしれないが, とりあえず掲げておく。

Rolle の定理の拡張

  1. [a, ∞) で f(x) が微分可能で, limx→∞f(x) = f(a) ならば c > a, f'(c) = 0 となる c がある。
  2. (-∞, b] で f(x) が微分可能で, limx→-∞f(x) = f(b) ならば c < b, f'(c) = 0 となる c がある。
  3. (-∞, ∞) で f(x) が微分可能で, limx→∞f(x) = limx→-∞f(x) ならば f'(c) = 0 となる c がある。

定理 [平均値定理 mean value theorem, Joseph Louis Lagrange 25th January, 1736--10th April, 1813]
函数 f(x) が閉区間 [a, b] で連続, 開区間 (a, b) で微分可能であるならば
[f(b) - f(a)]/(b - a) = f'(c), a < c < b
となる c が存在する。

[証明]

F(x) = f(x) - Ax と置いて, F(a) = F(b) となるようにしよう。 つまり

f(a) - Aa = f(b) - Ab なので, A = [f(b) - f(a)]/(b - a).

このとき, 上記の Rolle の定理によって a < c < b で F'(c) = 0 となる c がある。

F'(c) = f'(c) - A = 0 であるから f'(c) = A = [f(b) - f(a)]/(b - a).■

注:

  1. 平均値の定理は, 分母を払って
    f(b) - f(a) = f'(c)(b - a)
    という形で用いられることも多い。
  2. 上記の式で θ = (c - a)/(b - a) と置くと (この θ は角度とは何の関係もない) 明らかに 0 < θ < 1 で, c について解くと c = a + θ(b - a) だから, 平均値の定理の式は
    f(b) = f(a) + (b - a)f'(a + θ(b - a)), 0 < θ < 1
    となり, この式も良く用いられる。
  3. 更にいつものように h = b - a と置くと
    f(a + h) = f(a) + hf'(a + θh), 0 < θ < 1
    となる。 この式も良く用いられる。
  4. f'(a) ≠ 0 とすれば, |h| が十分小さいとき
    f(a + h) - f(a) ≒ hf'(a)
    (記号 ≒ は nearly equal, つまり大体等しいことを示す) であることが分かる。これが比例部分の原理である。

定理は a から b までの平均変化率が, 中間のどこかでの一点での変化率に等しいということである。 これは (a, f(a)) と (b, f(b)) というグラフの両端点を結んだ直線の傾きが, その間のどこかで引いた接線の傾きに等しいということで, グラフが描ける函数に関しては殆ど明らかともいえる。

フランス系ではこの定理を次の形で用いる, 平均値定理の条件に加え, a < x < b で A ≦ f'(x) ≦ B ならば A ≦ [f(b) - f(a)]/(b - a) ≦ B. この形の定理を特に 「有限増加の定理 théorème des accroissements finis」 という。 この定理から前に述べた定理 (f'(x) の符号によってグラフの増減が分かる定理) が証明される。

定理 [Cauchy (コーシー) 平均値定理]

区間 [a, b] で f(x), g(x) は連続, (a, b) で微分可能とする。 このとき a< c < b であるような c が存在して

(f(a) - f(b))/(g(a) - g(b)) = f'(c)/g'(c)

とできる。 但し

  1. g(a) ≠ g(b).
  2. f'(x) = g'(x) = 0 (同時に 0) となるような a < x < b は存在しない

と仮定する。

Lagrange の平均値の定理と同様に F(x) = λf(x) - μg(x) として, F(a) = F(b) となるようなものを求める。 つまり

λf(a) - μg(a) = λf(b) - μg(b)

から

λ(f(b) - f(a)) = μ(g(b) - g(a))

だから μ = f(b) - f(a), λ = g(b) - g(a) とすれば十分である。 即ち

F(x) = (g(b) - g(a))f(x) - (f(b) - f(a))g(x)

とする。 こうすると F(a) = F(b) になっているから, Rolle の定理によって F'(c) = 0 となる a < c < b がある。 つまり

F'(c) = (g(b) - g(a))f'(c) - (f(b) - f(a))g'(c) = 0.

仮定 1 (但し以下) によって g'(c) = 0 と仮定すると g(b) - g(a) ≠ 0 だから f'(c) = 0 となるから, 仮定 2 に反するので g'(c) ≠ 0. 従って移項して両辺を g'(c) で割ると, 定理の式を得る

これも Lagrange の平均値の定理同様に

(f(a + h) - f(a))/(g(a + h) - g(a)) = f'(a + θh)/g'(a + θh), h ≠ 0, 0 < θ < 1

と書かれることがある。

Cauchy 平均値定理の幾何学的意味は x = g(t), y = f(t) と媒介変数表示で書かれた曲線が, (g(a), f(a)), (g(b), f(b)) という二点で結んだ線分と同じ傾きを持つ接線を a< c < b という点で持つということである。 要するに, 曲線 y = f(x) で成り立つ平均値定理が, 同時に媒介変数表示の曲線に関しても成り立つということを述べただけである。

定理 [de l'Hospital (ロピタル)]

f(x), g(x) が開区間 (a, b) で微分可能で limx→a+0f(x) = 0, limx→a+0g(x) = 0, g'(x()≠ 0 を満たすときに limx→a+0 (f'(x)/g'(x)) が存在すれば

limx→a+0 (f(x)/g(x)) = limx→a+0 (f'(x)/g'(x)).

ここで limx→a+0 とは x > a を満たしながら x が a に近付くことである。 同様に x < a を満たしながら x が a に近付くことを limx→a-0 と書き, この場合でも上記 l'Hospital の定理は成立する。 その他にも limx→a+0f(x), limx→a+0g(x) が共に ±∞ でも成立するが, 証明は大分技巧的になる。

証明:

Cauchy 平均値定理により 0 < θ < 1 が存在して

f(a + h)/g(a + h) = (f(a + h) - f(a))/(g(a + h) - g(a)) = f'(a + θh)/g'(a + θh).

従って

limx→a+0 (f(x)/g(x)) = limh→+0 (f(a + h)/g(a + h))
= limh→+0(f(a + h) - f(a))/(g(a + h) - g(a))
= limh→+0(f'(a + θh)/g'(a + θh))
= limx→a+0 (f'(x)/g'(x))□

limx→a+0f(x), limx→a+0g(x) が共に ±∞ の場合は, y を (a の充分近くに y > a として) 適当に固定した数として Cauchy 平均値定理より

(f(x) - f(y))/(g(x) - g(y)) = f'(c)/g'(c)

であって, 更に

(f(x) - f(y))/(g(x) - g(y)) = (f(x)/g(x) - f(y)/g(x)) / (1 - g(y)/g(x))

であるからここで (y は固定したままで) x → a+0 とすると c → a, f(y)/g(x) → 0, g(y)/g(x) → 0 となるから結局

limx→a+0 (f(x)/g(x)) = limx→a+0 (f(x)/g(x) - f(y)/g(x)) / (1 - g(y)/g(x))
= limx→a+0 (f(x) - f(y))/(g(x) - g(y)) = limx→a+0 f'(c)/g'(c)
= limx→a+0 (f'(x)/g'(x))□


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