正弦函数と余弦函数の微分


微分の定義は であったことを思い出そう。 これにあわせて, 正弦函数の微分をしようとすれば, 加法公式を用いて

となる。 問題なのは limh→0 ((cos h - 1)/h) と limh→0 (sin h /h) であるが, 実は後ろの方を考えれば, 前の方も解決できることが分かる。 そこで, sin h / h を考えてみよう。

通常, 教科書に出ている説明は, tautology (同語反復 --- というか論点先取) の問題があるので, ここでは違う説明をする。 先ず sin は奇函数 (奇函数についてはここここを参照) だから h > 0 として良い。 [脚注]

図で外側の円は単位円即ち, 半径 1 の円である。中心角 h [rad] の扇形を描き, 図のように OAB とする。 線分 AB の中点を M とし, OM を半径とする中心 O の円を描き, OA, OB との交点を各々 C, D とする。

先ず 弧 AB の長さは, (弧度法の) 定義から h である。 従って 扇形 OAB の面積は h / 2 である。

次に △OAB の面積を考えると, 面積公式から (sin h)/ 2 である。

最後に OM = cos (h/2) であるから, 弧 CD = h cos (h/2). 従って扇形 OCD の面積は (1/2) cos (h/2)×h cos (h/2) = h cos2(h/2)/2.

明らかに 扇形 OCD < △OAB < 扇形 OAB であるから
h cos2(h/2)/2 < (sin h)/ 2 < h / 2.

辺々を h/2 で割ると
cos2(h/2) < (sin h)/h < 1.

ここで h → 0 とすると
1 ≦  limh→0 (sin h /h) ≦ 1
(ここで等号が入るのが不思議に思われるかもしれないが, 右と左が一致することから考えて, 等号が入るのが自然と思って欲しい。 実は一般に不等号の極限をとると, 等号を入れておかなければならないのである。)

従って limh→0 (sin h /h) = 1 でなければならない。

もう一度書くと

.

これを用いて

であるから, 従って, (sin x)' = cos x なることが分かる。

さて次に余弦函数を微分しよう。 こちらも定義から

(途中大分省略したが, 省略した部分は上記と同様である。)

即ち (cos x)' = -sin x なることが分かった。


脚注:

この page を書いてから後, 私の高校生のときの notebook を参照した所, 別の証明がしてあるので, それも紹介しておくことにする。

図で OA = OB = 1 とし, AT は ∠TAO = ∠R とする。 前と同様に

△OAB < 扇形 OAB < △OAT.

従って (1/2)sin h < h/2 < (1/2)tan h. 辺々 2 倍して sin h < h < tan h. 前に述べたように, 0 < h < π/2 で考えているので, sin h > 0 である。 従って sin h で全ての辺を割って 1 < h/sin h < 1/cos h. 逆数を採って 1 > (sin h)/h > cos h.

極限を採って limh→0 (sin h /h) = 1 となることは前と同じ。


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