挟み撃ちによる極限


先ず, 原理を述べておく。

数列 {an} に関する漸化式の不動点 α と 0 < k < 1 を満たす定数 k があって

|an - α| < k|an-1 - α|

を満たすとき, limn→∞ an = α.

これは何故かというと, 先の不等式を逐次代入していくと

|an - α| < k|an-1 - α| < k2|an-2 - α| < … < kn-1|a1 - α|

だからである。 尚, この方法を用いれば, 一般項がまったく求まらない場合にも, 極限値だけは求めることが出来る場合がある。


例) 次の各々の漸化式が定める数列 {an} の極限値を求めよ。

(1) an+1 = √(an + 2), a1 > -2.
(2) an+1 = (an + 2)/(an + 1), a1 = 1.
(3) an+1 = (4an + 3)/(an + 2), a1 = 1.
(4) an+1 = √(an) + 1, a1 =1.
(5) an+1 = √(2an + 3), a1 = 1.
(6) an+1 = (1/2)(an + 3/an), a1 > √3.


解)

(1) 不動点方程式 x = √(x + 2) を考える。 x2 - x - 2 = (x - 2)(x + 1) = 0 より, 不動点は x = 2, -1 である。 明かに an > 0 だから, 極限値は 2 であると推測される。 ここで

|an+1 - 2| = |√(an + 2) - 2| = |(an + 2 - 4)/(√(an + 2) + 2)| … 分子の有理化
< (1/2)|an - 2| … ∵√(an + 2) > 0.

従って逐次代入して |an - 2| < (1/2)n-1|a1 - 2| → 0 as n → ∞. よって an → 2 as n → ∞.

(2) 不動点方程式 x = (x + 2)/(x + 1) を考える。 x(x + 1) = x + 2. 即ち x2 + x = x + 2. よって x2 = 2 から, 不動点は x = ±√2 である。 a1 = 1 であるから an > 0 なので, 極限値は √2 であると推定される。 ここで

|an+1 - √2| = |(an + 2)/(an + 1) - √2| = |(an + 2 - (√2)an - √2)/(an + 1)|
= |((1-√2)an + (2-√2))/(an + 1)| = |(-an + √2)/((1+√2)(an + 1))| = (1/(1+√2))|(an - √2)/(an + 1)|
< (1/(1+√2))|an - √2| < … < (1/(1+√2))n|a1 - √2| → 0 as n → ∞.

従って an → √2 as n → ∞.

(3) 不動点方程式 x = (4x + 3)/(x + 2) を考える。 x2 + 2x = 4x + 3. x2 - 2x - 3 = (x - 3)(x + 1) = 0 より, 不動点は x = 3, -1. a1 = 1 だから明かに an > 0 なので, 極限値は 3 であると推定される。 ここで

|an+1 - 3| = |(4an + 3)/(an + 2) - 3| = |(an - 3)/(an + 2)| < (1/2)|an - 3| < … < (1/2)n|a1 - 3| → 0 as n → ∞.

従って an → 3 as n → ∞.

(4) 不動点方程式 x = (√x) + 1 より (x - 1)2 = x, x ≧ 0. x2 - 3x + 1 = 0, x ≧ 0. 解の公式から x = (3 ± √5)/2. 明かに an > 1 だから, 極限値は (3 + √5)/2 と推定される。 ここで

|an+1 - (3 + √5)/2| = |2√(an) + 2 - 3 - √5|/2 = |2√(an) - 1 - √5|/2 = |4an - (1 + √5)2|/|2(2√(an) + 1 + √5)| = |4an - 2(3 + √5)|/|2(2√(an) + 1 + √5) = |an - (3 + √5)/2|/|√(an) + (1 + √5)/2|
< (2/(3 + √5))|an - (3 + √5)/2| < … < (2/(3 + √5))n|a1 - (3 + √5)/2| → 0 as n → ∞.

従って an → (3 + √5)/2 as n → ∞.

(5) 不動点方程式 x = √(2x + 3) より x2 - 2x - 3 = (x - 3)(x + 1) = 0. x = 3, -1. an > 0 より, 極限値は 3 と推定される。 ここで

|an+1 - 3| = |√(2an + 3) - 3| = |2an + 3 - 9|/|√(2an + 3) + 3| < (2/3)|an - 3| < … < (2/3)n|a1 - 3| → 0 as n → ∞.

従って an → 3 as n → ∞.

(6) 不動点方程式 x = (1/2)(x + 3/x) より 2x2 = x2 + 3. 従って x2 = 3 即ち x = ±√3 だが, a1 > 0 より, 極限値は √3 と推定される。 ここで

|an+1 - √3| = |(1/2)(an + 3/an) - √3| = (1/2)|(an2 - (2√3)an + 3)/an| = (1/2)|(an - √3)2/an| = |(an - √3)(an - √3)/an| = (1/2)|an - √3||1 - √3/an| < (1/2)|an - √3|.

∵ an > 0 より相加平均と相乗平均の関係から (1/2)(an + 3/an) ≧ √(an・3/an) = √3. しかし等号が成立する場合は an = 3/an 即ち an = √3 の場合だが, ある番号で an = √3 であると全ての番号で an = √3 でなければならないので, a1 > √3 に反する。 従って an = (1/2)(an-1 + 3/an-1) > √3.

よって |an - √3| < (1/2)n-1|a1 - √3| → 0 as n → ∞. 故に an → √3 as n → ∞.

同様にして a1 > c > 0 で an+1 = (1/2)(an + c2/an) とすると, an → c となることが証明できる。


次へ
漸化式の極限の目次