循環小数


1/3 = 0.333333333......, 1/6 = 0.166666......, 1/7 = 0.142857142857142857...... のように, 有理数のうち, 分母が 2n5m の形で素因数分解出来ないものは, 小数で表すと, 同じ数の組が (無限に) 繰り返される。 このような小数を循環小数 recurring decimal, repeated decimal, repeating decimal, circulating decimal という。 本当は , , の様な表記をするのが通例なのだが, 循環小数を扱うのはここだけなので, 簡単のため 1/3 = 0.[3], 1/6 = 0.1[6], 1/7 = 0.[142857] のような表記をすることにする。 このような 1/3 の 3, 1/6 の 6, 1/7 の 142857 の部分を循環節 recurring period, repetend という。 更に 1/3 や 1/7 のように, 循環節が小数点のすぐ右から始まるものを, 純循環小数, 1/6 の様に循環しない部分があってから循環節が始まるものを混循環小数という。 実は純循環小数は分母を素因数分解した場合に素因数として 2 と 5 が出てこないもの, 混循環小数は分母を素因数分解した場合に, 素因数として 2 又は 5 が出て来るものであることが知られている。

又ある実数が有理分数であるならば小数表現した場合 (それは十進法に限らず) 有限又は循環小数になることが分かっている。 ここではこの逆, 即ち循環小数を有理分数に復元するやり方を扱う。

小学校 (中学校 ?) では, このような循環小数を分数に復元するのに, 次のような方程式を立てて行う。

x = 0.[3] と置く。 x = 0.3[3] でもあることに注目して 10x = 3.[3]. 従って 9x = 10x - x = 3.[3] - 0.[3] = 3. 従って x = 3/9 = 1/3. 等々。

このやり方の問題点はどこにあるかというと 0.[3] = 0.333333 のような無限に続いている部分を本当に引算してしまっていいのかという問題である。

解析学では, 循環小数は全て等比数列であると見ることによって, 次のようにやるのである。

例) [1] 次の各々の循環小数を有理既約分数で表せ。

(1) 0.2[34]. (2) 0.[467]. (3) 0.43[21]. (4) 0.[132] (5) 0.20[375]. (6) 0.8[9].

解)

(1) 0.2[34] = 0.2 + 0.034 + 0.00034 + 0.0000034 + …
= 2/10 + 34/103 + 34/105 + 34/107 + …
= 2/10 + (34/103)/(1 - 1/102) = 2/10 + 34/990 = 232/990 = 116/495.

(2) 0.[467] = 0.467 + 0.000467 + 0.000000467 + …
= 467/103 + 467/106 + 467/109 + …
= (467/103)/(1 - 1/103) = 467/999.

(3) 0.43[21] = 0.43 + 0.0021 + 0.000021 + 0.00000021 + …
= 43/100 + 21/104 + 21/106 + 21/108 + …
= 43/100 + (21/104)/(1 - 1/102) = 43/100 + 21/9900 = 43/100 + 7/3300
= 1426/3300 = 713/1650.

(4) 0.[132] = 0.132 + 0.000132 + 0.000000132 + …
= 132/103 + 132/106 + 132/109 + …
= (132/103)/(1 - 1/103) = 132/999 = 44/333.

(5) 0.20[375] = 0.2 + 0.00375 + 0.00000375 + 0.00000000375 + …
= 2/10 + 375/105 + 375/108 + 375/1011 + …
= 2/10 + (375/105)/(1 - 1/103) = 2/10 + 375/99900 = 1/5 + 5/1332
= 1357/6660.

(6) 0.8[9] = 0.8 + 0.09 + 0.009 + 0.0009 + …
= 8/10 + 9/102 + 9/103 + 9/104 + …
= 8/10 + (9/102)/(1 - 1/10) = 8/10 + 9/90 = 8/10 + 1/10 = 9/10.

注)

大体, 上記を見てやけに 99 とか 999 とか 10n - 1 が並ぶなぁと思ったであろう。 実は 0.[1] = 1/9, 0.[12] = 12/99 = 4/33, 0.[123] = 123/999 = 41/333 のように, 純循環小数は, (循環節)/(10(循環節の長さ) - 1) という形で必ず復元できる。 これを用いて混循環小数も例えば 0.1[6] = 0.1 + 0.0[6] = 0.1 + (1/10)×0.[6] = 1/10 + (1/10)×(6/9) = 1/10 + 2/30 = (3 + 2)/30 = 5/30 = 1/6 のように復元できるのである。 実は面倒なので上記の計算はこれを使って大分飛ばしてある。 私が普段の授業であんまり循環小数を扱いたがらないのは, 厳密にやるよりもこの方が計算が楽だからである。

又, 良くあちこちの掲示板で議論になっているが, 0.9999999...... = 0.[9] = 1 である。 従って, 有限小数というのは実は二つの無限小数表記 e.g. 1.000000.... = 0.9999999...... 即ち 1.[0] = 0.[9] というのを持っていることになる。 これは有限小数だけの特徴である。


例) [2] 0.1[23] ÷ 0.[14] の結果を循環小数で表せ。

[3] 循環小数 2.[a] の平方根 √(2.[a]) も循環小数となるような一桁の自然数 a を求めよ。

解)

[2] 与式 = (1/10 + (1/10)×(23/99))÷(14/99)
= (1/10 + 23/990)×99/14
= 122/990×99/14 = 122/140 = 61/70 = (1/10)・(56 + 5)/7 = (1/10)・(8 + 5/7)
= (1/10)・(8 + (5×142857)/(7×142857))
= (1/10)・(8 + 714285/999999) = 8.[714285]÷10
= 0.8[714285].

注) 上記のように 1/7 = 0.[142857] であることが分かっていたから 142857 = 999999/7 を分子分母に掛けたのである。

[3] 2.[a] = 2 + a/9 = (a + 18)/9. 故に √(2.[a]) = (√(a + 18))/3.

これが循環小数になるから, 18 + a は平方数であり, a は 0 < a ≦ 9 の自然数だから, 18 < a + 18 ≦ 27 で平方数を小さい方から並べていくと 1, 4, 9, 16, 25, 36, ... なので, a + 18 = 25 しかあり得ない。 従って a = 7 であることが必要。

実際 2.[7] = 25/9 だから √(2.[7]) = 5/3 = 2 + 2/3 = 2.[6] で適。


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