2021 大学入学共通テスト (第一日程) 数学 I・A 第五問

$AD$ は $\angle{A}$ を二等分しているから
$BD=\ds{\ 3\times4\ \over3 + 5} = \ds{\ 3\ \over2}$.

又 $\triangle{ABD}$ は $\angle{B} = \angle{R}$ の直角三角形であるから
$DA = \sqrt{3^2 +\left(\ds{\ 3\ \over2}\right)^2\ } = 3\sqrt{1 + \left(\ds{\ 1\ \over2}\right)^2\ } = \ds{\ 3\sqrt{5\ }\ \over2}$.

外接円の図

$\triangle{ABD}$ で $\cos\angle{DAB} = \ds{AB\over\ DA\ }= \ds{2\times3\over\ 3\sqrt{5\ }\ }= \ds{2\over\ \sqrt{5\ }}$.
故に $AE = AC\cos\angle{DAB}=5\times\ds{2\over\ \sqrt{5\ }} = 2\sqrt{5\ }$.

円2

上の図で $H$ を円 $P$ が辺 $AB$ と接する点とすると $\triangle{APH}$ ∽ $\triangle{ADB}$ だから
$DB:PH = AD:AP$
$\ds{\ 3\ \over2}:r=\ds{\ 3\sqrt{5\ }\ \over2}:AP$
$1:r = \sqrt{5\ }:AP$
より $AP = \sqrt{5\ }r$.

$F$ は円 $P$ と $\triangle{ABC}$ の外接円の接点だから (図の直線が共通外接線になっているので) $GF$ は直径。
従って $PG = 5 - r$.

(べき) の定理より
$r(5-r)=\sqrt{5\ }r\cdot\sqrt{5\ }(2 - r)$
$5r-r^2 = 5r(2-r)$
$5r-r^2 = 10r-5r^2$.
$4r^2-5r=0$
$r(4r-5)=0$
$r > 0$ であるから $r = \ds{\ 5\ \over4}$.

内接円 $Q$ の半径を $r_I$ とすると
$\triangle{ABC} = \ds{1\over\ 2\ }(AB + BC + CA)r_I$
なので
$r_I=\ds{AB\cdot BC\over3+4+5} = \ds{12\over12}=1$

$TB = r_I = 1$ だから $AT = 3 - 1 = 2$.
$AQ = \sqrt{2^2 + 1^2\ }=\sqrt{5\ }$.

$\triangle{APH}$ ∽ $\triangle{ADB}$ なので
$AH:3 =\ds{\ 5\ \over4}:\ds{\ 3\ \over2}$
$AH=\ds{2\over\ 3\ }\times\ds{\ 3\times5\ \over4}=\ds{\ 5\ \over2}$.

さて, 三点 $B$, $H$, $Q$ を通る円を考える。 この円の円周上に点 $D$ 又は $E$ があるか, というのが次の問題である。
この円が $D$ と $E$ の両方を通るとは考えられない。
$D$ は通るが $E$ は通りそうにない。 $D$ と $E$ は直線 $BQ$ の同じ側にあり, $Q$, $D$, $P$ が同一直線上にあることから
$\angle{QDB} > \angle{QEB}$ だからである。

さて $\triangle{AQH}$ と $\triangle{ABD}$ に於いて
$\ds{\ AQ\ \over AH} = \ds{\sqrt{5\ }\over\ \ds{\ 5\ \over2}\ } =\ds{2\over\ \sqrt{5\ }\ }$,
$\ds{\ AB\ \over AD} = \ds{3\over\ \ds{\ 3\sqrt{5\ }\ \over2}\ } =\ds{2\over\ \sqrt{5\ }\ }$
で $\angle{A}$ は共通だから $\triangle{AQH}$ ∽ $\triangle{ABD}$.
特に $\angle{AHQ} = \angle{ADB}$.
よって四点 $B$, $H$, $Q$, $D$ は同一円周上にあるが $B$, $H$, $Q$, $E$ は同一円周上にはない。


この問題は円が沢山参加するので, 図が描き難く, それ故解くのが難しい。 上の図で二番目の物が特に描き難い。
(べき) の定理を使うということから $FG$ が外接円の直径だと気付くが, それを証明しようとすると, 図のように共通外接線が引けるということを使わねばならないので, 結構難しくなる。

又最後の問題で, 問題文の通りに解こうとすると難し過ぎるが, 上記の様に最初から三点 $B$, $H$, $Q$ を通る円を考えると大分見通しが良くなる。

僕の感じでは第五問は他の選択問題に比して難し過ぎる。 去年も同様だったので, これでは幾何を敬遠する傾向が強まってしまう。 そうでなくても, 幾何は難しくて一般の人には嫌われているので良くない傾向だと思う。