[review]
a, b, c, n が x に無関係な定数であるとき
(c)' = 0, (xn)' = nxn-1.
[線型性] (af(x) + bg(x))' = af'(x) + bg'(x).
[接線の公式]
函数 y = f(x) のグラフの x = a に対応する点に於ける接線の方程式は
y = f'(a)(x - a) + f(a).
前の page で, 微分係数が接線の傾きだということを学んだ。 微分係数は導函数 y' = f'(x) に各々の x の値を代入することによって得られるのだった。 ということは, 導函数 y' = f'(x) は, 各 x に対応するグラフが 「どっち方向を向いているか」 ということを示していることになる。 だって, 接線とグラフはぴったりくっついているのだから, 同じ方向を向いているに決まっている。 つまり, グラフという曲線を無限に細かく切り刻んだとき, 残るものはその点の位置だけではなくて, 微分係数というその曲線の方向が残るわけだ --- とそう私は理解している。
従って, 導函数を求めて, それが + だと, 傾きが + だから, グラフは右上がりになっており, - だと, 傾きが - だから, グラフは右に下がっている。 --- ということは正しいのだが, この証明がえらく難しい。 我々はとりあえず, これは直感的に正しいとして先に進む。 あとでこのことの証明をするかもしれない。一応, ここの所を定理として掲げておく。
その前に, a < b が定数として, a < x < b, a ≦ x < b, a < x ≦ b, a ≦ x ≦ b という 4 つの不等式で示されている, 各々の範囲のことを数学用語として 「区間 interval」 と呼ぶということを注意しておく。 又単調増大 monotonous increasing とは a < b ならば f(a) < f(b) であることであり, 単調減少 monotonous decreasing とは a < b ならば f(a) > f(b) であること。 つまり単調増大とはグラフが右上がりであることで, 単調減少とはグラフが右下がりということである (以上の定義は狭義 --- 即ち狭い意味である)。
[定理]例 1) 函数 y = x3 - 3x2 + 4 のグラフの概形を描け。
注) 先ず概形 (がいけい) という言葉を最近は知らない人が多いらしいので, これの説明をする。 概形とは 「大体の形」 である。 今では computer を使って, 例えばこのくらいの曲線なら Microsoft Excel を用いれば簡単にグラフが描けるし, もっと複雑な曲線, 或いは曲面であると, Mathematica といったような tool を用いれば簡単に詳しい形を調べることができるようになっている。 しかし, そんな詳しい形ではなくって, 大体の形が分かればいいことは多い。 そこで微分を用いて, 大体の形を描こうというのである。
解) y' = 3x2 - 6x = 3x(x - 2). 上記の定理から, これが + なのか - なのかを判定することが重要である。 y' = 3x(x - 2) = 0 と置こう。 このとき x = 0, 2 であるが, この二点以外では, y' は + か - かのどちらかである。そして --- 直感的には, グラフが多分つながっているだろうと思われるので --- x < 0, 0 < x < 2, 2 < x の各々の区間で, + であるか - であるかは決まっているはずである。
x > 2 としよう。 このとき 3 > 0, x > 0, x - 2 > 0 だから, y' = 3x(x - 2) > 0.
0 < x < 2 としよう。 このとき 3 > 0, x > 0, x - 2 < 0 であるから, y' = 3x(x - 2) < 0.
x < 0 としよう。このとき, 3 > 0, x < 0, x - 2 < 0 であるから, y' = 3x(x - 2) > 0.
又 x = 0 のとき y = 4, x = 2 のとき y = 0.
ここで次のような増減表を書く。
x | 0 | 2 | |||
y' | + | 0 | - | 0 | + |
y | ↑ | 4 | ↓ | 0 | ↑ |
本当は↑や↓はもう一寸先端が右側に寄った斜めのものを書くのだが, そういう font を使うと表示できない人がたくさんいると思われるのでやめた。
これで, x = 0 のところは, 山のように, 上がって下がる所, x = 2 のところは谷のように下がって上がる所であることが分かる。このようなところを極値点という。このときの y = 4 をこの函数の極大値, y = 0 をこの函数の極小値という。
すぐ分かるように, 極値点になるためには f'(x) = 0 でなければならない。 しかし, 逆に f'(x) = 0 であるからといって, 極値点であるとは限らない。 --- それは又別の例をあげよう。
とりあえず, これで上下の状況がわかり, y 切片も分かったので, グラフが描ける。 グラフは --- 実は 「接点」 の page で, Microsoft Excel が描いていた奴なので, 省略しちゃいましょう (笑)。
例 2) 函数 y = x4 - 4x3 のグラフの概形を描け。
解) y' = 4x3 - 12x2 = 4x2(x - 3). y' = 4x2(x - 3) = 0 と置くと, x = 0, 3 だが, 明らかに x2 ≧ 0 で, 等号は x = 0 のみである。 従って符号変化は x = 3 の前後だけで起こる。
x = 0 ならば y = 0, x = 3 ならば, y = -27.
増減表は
x | 0 | 3 | |||
y' | - | 0 | - | 0 | + |
y | ↓ | 0 | ↓ | 極小 -27 |
↑ |
ここで, 原点 (0, 0) は, 微分係数が 0 であるにもかかわらず, 極値点ではない。微分係数が 0 ということは, 接線が x 軸に平行であることを意味している。又, 普通の点では接線を引くと, その近くでは元の曲線が接線の同じ側にあるのだが, このような点では元の曲線が接線の両側にある。 このような点 --- 微分係数が 0 であるが, 極値点ではない点 --- をも含めて停留点 stationary point と呼ぶ (つまり微分係数が 0 であれば停留点)。 更に一般に, 接線を引いた場合, その近くで元の曲線が接線の両側にある点 --- もっとちゃんとした定義は又あとで --- のことを変曲点 inflection point, inflexion point という。
グラフは以下の通り。
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