スケール変換


先ず, y = (ax + b)n の微分を考えよう。 勿論 a, b は定数で a ≠ 0 とする。

n = 1 の場合:
y = (ax + b) だから y' = a.

n = 2 の場合:
y = (ax + b)2 = a2x2 + 2abx + b2 だから
y' = 2a2x + 2ab = 2a(ax + b).

n = 3 の場合:
y = (ax + b)3 = a3x3 + 3a2bx2 + 3ab2x + b3 だから
y' = 3a3x2 + 6a2bx + 3ab2 = 3a(a2x2 + 2abx + b2) = 3a(ax + b)2.

n = 4 の場合:
y = (ax + b)4 = a4x4 + 4a3bx3 + 6a2b2x2 + 4ab3x + b4 だから
y' = 4a4x3 + 12a3bx2 + 12a2b2x + 4ab3 = 4a(a3x3 + 3a2bx2 + 3ab2x + b3) = 4a(ax + b)3.

...... というわけで, そろそろ何か気付きませんか ?

そうですね。少なくとも n が自然数だと

y = (ax + b)n ならば y' = na(ax + b)n-1 であるような気がしませんか ?

実はこれは正しいんです。 一般に函数 f(x) を微分して f'(x) になっているとき, これの x のところに更に ax + b を代入したものを f'(ax + b) と書きますが, このような書き方をすると

[定理]
a, b は定数で a ≠ 0 とするとき
y = f(ax + b) ならば, y' = af'(ax + b).

これは正確には 「合成函数の微分」 --- 別名を鎖則 chain law --- という奴を用いて証明するのですが, 微分係数の意味を考えて, 次のように考えると納得できるでしょう。 --- 難しいから理解できなくても落ち込まないように (笑)。

先ず, 函数 y = f(x - q), q は定数, というのを考えると, この函数のグラフは良く知られているように, 函数 y = f(x) のグラフを x 軸方向に q だけ平行移動したものになります。 それは, 例えば q を単位として, 次のような表を書いて見ると分かるでしょう。

x -3q -2q -q 0 q 2q 3q
y = f(x) f(-3q) f(-2q) f(-q) f(0) f(q) f(2q) f(3q)
y = f(x - q) f(-4q) f(-3q) f(-2q) f(-q) f(0) f(q) f(2q)

y の値が下の方が q だけ右にずれてるでしょ ? つまり平行に右に q 動いてるってことだよね。 そして, 微分係数の意味は, その点での接線の傾きだったのだから, 平行移動しても変わらない。つまり例えば上の (q, f(q)) での接線の傾き と, 下の (2q, f(q)) での傾きは共に f'(q) で等しいはず --- 当然だね。上の y = f(x) の微分は y' = f'(x) で, 下の方は, x - q に x = 2q を代入すると丁度 q になるので, 元の函数が y = f(x - q) の場合は y' = f'(x - q) になるわけなんだ。 分かったかな ?

とにかく, 平行移動で接線の傾きが変わらないので y = f(x - q) ならば y' = f'(x - q) になるわけなのだ。

では次に y = f(ax), a は定数で a ≠ 0, の方を考えよう。

こっちは一寸難しいのだが, x に係数 a がついてると, x 軸方向に 1/a (a 分の一) だけ拡大縮小した効果が表れるんだな。 つまり x 軸上のスケールの変換をしているわけだ。

もう少し具体的にいうと, y = f(x) の方で x = 0 から 1/a だけ右に行くと, それは丁度 y = f(ax) の方では 1 右にいったのと同じ効果がある。 だって x = k/a を代入すると y = f(ax) では y = f(a(k/a)) = f(k) だから, 元の函数のグラフで x = 0 から k/a だけ右に行くと, k だけ右に行くことになるよね ?

というわけで, それは当然接線の方にも影響されるわけだ。 その影響が微分係数に現れるんだね。 今, a > 1 としよう。そうすると, y = f(ax) のグラフは, 横方向に 1/a に詰まった感じのグラフになる。 対応する場所で接線を引くと, x 軸方向の 「詰まり」 は, 直線の傾きが (y の差)/(x の差) という形で計算するので, 傾きとしては, a 倍として現れる。 慣習として 「y の差」 を Δy, 「x の差」 をΔx と書く。 というのは記号 Δ はギリシャ文字デルタ delta の大文字で, 差という英語 difference の頭文字 d と同じ音だから。 傾きが a 倍になるってことは, この記号を用いて次のようにして確かめられる。

ということで結局 y = f(ax) を微分すると, y' = af'(ax) になるのだ。

以上の二つから y = f(ax + b) = f(a(x + b/a)) と考えて, y' = af'(ax + b) ってことが納得できればいいのだが...。

一応, y = x3 - x と, y = (ax)3 - ax のグラフ (及び, x = 1 と x = 1/a における接線) がどのように変化していくかを見ていく, Microsoft Excel 2000 の sheet を作ってみたので, 見てみて欲しい。前と同様にマクロは入っていないので, 安心だ (笑)。 但し, 例のように別窓が開くので, メモリの足りない人は注意。 ではここをクリック。


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