表題の 「対数微分法」 というのは, y = f(x) という函数の微分をするときに, f(x) が積や冪 (累乗) の複雑な形をしているときに, 対数をとってから微分すると易しい, というだけのことである。 仰々しく言っているがたいしたことはない。
z = log y (= log f(x)) と置こう。 勿論底は e である。このとき, y は x の函数であるから, 合成函数の微分によって
z' = dz/dx = d(log y)/dy × dy/dx = 1/y × y' = y'/y.
同様にして (log f(x))' = f'(x)/f(x).
と書いては見たが, これだと何をやっているのか分からないので, 実際にやってみよう。
例: 次の各々の函数を微分せよ。
(1) y = xx.
(2) y = xsin x.
(3) y = xp. (p は定数)
解)
(1) 両辺の対数をとると log y = x log x. この両辺を微分して
y'/y = log x + x/x = log x + 1.
従って y' = y(log x + 1) = xx(log x + 1).
対数微分法を使わないでやれば (実は同じことだが)
y' = (ex log x)' = (x log x)' ex log x = (log x + 1)xx.
(2) 両辺の対数をとると, log y = sin x log x. この両辺を微分して
y'/y = cos x log x + (sin x)/x.
従って
y' = y(cos x log x + (sin x)/x) = xsin x(cos x log x + (sin x)/x) = xsin
x - 1(x cos x log x + sin x).
これも対数微分法をやらないで済ますこともできる。 (省略)
(3) 両辺の対数をとると log y = p log x. 微分して y'/y = p/x.
従って y' = py/x = pxp/x = pxp-1.
これで p が定数であれば, 何でもこの公式が使えることが分かった。
実は積の微分, 商の微分は, 対数微分法と合成函数の微分だけでできる。
y = f(x)g(x) と置こう。 log y = log (f(x)g(x)) = log f(x) + log g(x).
y'/y = f'(x)/f(x) + g'(x)/g(x). 故に y' = yf'(x)/f(x) + yg'(x)/g(x) = (f(x)g(x))f'(x)/f(x) + (f(x)g(x))g'(x)/g(x) = f'(x)g(x) + f(x)g'(x).
商の微分も同様なのでやってみてください (練習問題).
一寸気になる人の為に:
対数函数の定義域 (即ち真数である条件) は log x に関し, x > 0 だった。ところが上記の例 (3) ではそういうことには無頓着に対数をとって微分している。 それでいいのか ? と思った君。 君はえらい !! ここまでの話に忠実且つ厳密に数学を進めると確かにそうなのだが, 実は対数函数というのは 「解析函数 analytic function」 と呼ばれる非常に性質の良い函数で, この場合真数が 0 でない限りに於いて, ここの議論が正当化される。 勿論 0 以外で良ければ殆ど OK. ここの例で扱ってるのは, 対数をとっている函数も解析函数なので 0 のところも大丈夫なのである。 細かい話は解析函数のところまで行ったらやることにする --- そこまで本当に行くかな ?
更に一般の教科書では, 定義域の問題もあるので, 対数函数の微分の所で述べたように普通対数微分法は絶対値 | | をつけて行われることが多い。
例えば y = xp について, |y| = |xp|. log |y| = log |xp| = log |x|p = p log |x|. 辺々微分して y'/y = p/x. 故に y' = py/x = pxp/x = pxp-1.
絶対値の微分をやっていなかったが, ここの問題は, 対数函数の微分に述べたような理由で, 余り拘泥しないでよい。 (拘泥 (こうでい) とは 「こだわる」 という意味である)