無限大 ∞ の逆数というものを考えることにする。 最初の定義から, ∞ > 0 である。 正の数の逆数はやはり正であるから, 1/∞ > 0 であるはずだが,
0 < 1 < 2 < 3 < 4 < 5 < 6 < …… < ∞
なのだから, 一般に 0 < a < b ⇒ 1/a > 1/b > 0 である (正の数なら大きい数で割った方が小さい) ことから,
1/1 > 1/2 > 1/3 > 1/4 > 1/5 > 1/6 > …… > 1/∞ > 0
であることが分かる。 従って 1/∞ という数は (意外かもしれないが) プラスのどんな実数よりも小さい正の数である。 そこで次のように定義する。
+0 = 1/∞.
(ここで, 符号 + を落として唯 0 と書くと普通の実数の 0 と区別がつかないので落としてはいけない。) 明らかに普通の実数 a に対し
a > 0 ⇒ a > +0 > 0
が成立する。 この +0 を正の無限小 infinitesimal という (が 「プラスゼロ」 と読む)。
定義
-0 = -1×(+0) = 1/(-∞) = -1/(+∞).
明らかに普通の実数 a に対し
a > 0 ⇒ 0 > -0 > -a
が成立する。 この -0 を負の無限小という (が 「マイナスゼロ」 と読む)。
記号の約束
x + (+0), x - (-0) を x + 0 と,
x - (+0), x + (-0) を x - 0 と
それぞれ略記する。
定義
拡張された実数 (即ち普通の実数と +∞, -∞ を合わせたもの) と正負の無限小との形式的な和 x ± 0 の全体を超実数という。 但し
+∞ ± 0 = +∞,
-∞ ± 0 = -∞と約束する。
記号の約束 (この記号はこの site 以外では絶対に通用しない)
超実数 x, y の少なくとも一方が ±∞ の何れでもないとき,
x ≡y (mod ±0) ⇔ x - y = 0 or +0 or -0.
これは要するに ±0 という無限小の数は, 標準的な立場 (普通の実数) から見ると 「ゴミ」 みたいなものだということを表現しているのである。
こうすると a を (普通の) 実数とするとき
a + 0 ≡a (mod ±0), +0 + a ≡a (mod ±0),
a - 0 ≡a (mod ±0), -0 + a ≡a (mod ±0),
±0 + ∞ = +∞, ±0 - ∞ = -∞
は感覚的に分かってもらえると思う。 更に
(+0)×(+0) = +0, (-0)×(-0) = +0,
(+0)×(-0) = -0, (-0)×(+0) = -0,
もだいたい分かるんじゃないかな ? 又定義 +0 = 1/(+∞) によって
a > 0
⇒
a×(+0) = (+0)×a = +0,
(-a)×(+0) = (+0)×(-a) = -0,
a÷(+0) = a/(+0) = +∞ (∵ a÷(+0) = a÷(1/(+∞)) = a×(+∞)),
a÷(-0) = a/(-0) = -∞,
(-a)÷(+0) = -a/(+0) = -∞,
(-a)÷(-0) = -a/(-0) = +∞,
a÷(+∞) = a/(+∞) = +0,
a÷(-∞) = a/(-∞) = -0,
(-a)÷(+∞) = -a/(+∞) = -0,
(-a)÷(-∞) = -a/(-∞) = +0,
(+0)÷(+∞) = +0/(+∞) = +0,
(+0)÷(-∞) = +0/(-∞) = -0,
(-0)÷(+∞) = -0/(+∞) = -0,
(-0)÷(-∞) = -0/(-∞) = +0,
が成立することも分かるであろう。
よく見ると符号 (プラスとマイナス) については実数と同様に自然な感じで成立していることが分かるので, 上記の表のうち 1/4 だけ覚えれば充分であるということも分かる。
重要な注意
(±∞)/(±∞), ±0×(±∞), ±0/(±0) は不定形である。
というのは例えば 2×∞ = ∞ だったから ∞/∞ = 2×∞/∞ = 2 かもしれないし, ∞/∞ = ∞/(2×∞) = 1/2 かもしれないし, ∞/∞ = 1 かもしれないからである。 (もう一度念の為にいっておくが, 今書いたみたいな変な式を書いてはいけない)
あとの二つは無限小の定義に戻ってみれば, 最初のと同じ式であることが分かる。