簡単の為に, 数列 {an} の漸化式が an+1 = f(an) の形で与えられているとする (それ以外の場合も同様である)。 この site では漸化式の不動点方程式というものを x = f(x) で定義したのであった。
[定理]
数列 {an} が漸化式 an+1 = f(an) を満たしており, 極限値 α を持つとすると, α は方程式 α = f(α) を満たす。
これは明らかであろう。 何故なら, limn→∞an = limn→∞an+1 であるから。
しかし勿論逆は成立しない。 当然, 方程式 x = f(x) が唯一つの解を持つとは限らないし, 収束しない数列の漸化式でも, 不動点方程式は解を持ちうる。 例えば, a1 = 1, an+1 = 2an + 1 は明かに発散するが, 不動点方程式は解 x = -1 を持つ。 にもかかわらず, 収束するならば, 不動点方程式の解の一つでなければならないということをこの定理は述べている。
では不動点方程式の定める解 --- 即ち漸化式の定める不動点 --- のうちどれが収束してどれが収束しないのか ? それは一般的にはやってみなければ分からない (^_^;; しかし, ある種の不動点は初期値 (初項) の値にかかわらずその不動点に収束する。
例) an+1 = (1/2)an + 1 とする。 an+1 - 2 = (1/2)(an - 2) であるから an = (1/2)n-1(a1 - 2) + 2 → 2 as n → ∞. 従って limn→∞an = 2.
この例で漸化式を y = (1/2)x + 1 と見て, graph を描いてみよう。 すると
こんな感じになっている。 ここに書いておいたように f:an → an+1 という変換を起こしているのである。 これから直線 y = x を用いて
の様な変換を行えばよい。 この二つを合わせると次の図がえられる。
このとき an が x 軸上の点列として与えられ, 図のように y = (1/2)x + 1 と y = x との交点 (2, 2) に近付いていくことが分かる。 又出発点 (初項, 初期条件) にかかわらず必ず 2 に収束する (次の図)。
明かにこの収束点は, x = (1/2)x + 1 即ち不動点方程式の解, 不動点である。 このように初期値にかかわらずその点に収束していくような不動点を吸引的 absorptive であるという。
ところが, 漸化式 an+1 = (3/2) an + 1 で同じことをやると, 初期値にかかわらず発散することが分かる。
このようなとき不動点は排出的 repulsive であるといわれる。
排出的不動点は形式的に bn = a-n という数列を考えると, 数列 {bn} に関しては吸引的不動点 (即ち {bn} の極限値) になっていることに注意されたい。
以上を纏めると次のようになる (勿論あんまり厳密とは言い難い):
an+1 = f(an) 型の漸化式は y = x, y = f(x) の graphs を描き, a1 から順に上記のような折れ線を作っていくと, その進み方から収束発散が判定出来, 収束する場合は, 二つの graphs の交点の x 座標がその極限値となる。