A を空でない半群とする (これが必要なことは ohkawa 氏によって指摘された)。 半群 (A, ・) が次の性質を満たすとき, (A, ・) は群 group であるという。 以下 ・ も省略して掛算のように書く。
∀a∀b ∈ A ∃!x∃!y ∈ A(ax = b ∧ ya = b). … (1)
さて, この場合に, ∃!e ∀a ∈ A(ae = ea = a) となる元 e が存在することを示そう。 この特別な元 e を単位元 unit element という (e と書くのはドイツ語 Einheit から来ているという)。
(以下の議論は Red cat 氏による) ここで b = a とすると ∀a ∈ A ∃!x∃!y ∈ A(ax = a ∧ ya = a). この x, y を ea, e'a と書くことにする。 即ち
aea = a (a の右単位元),
e'aa = a (a の左単位元).
さて, 又別に a, b, c を任意にとり, (1) で次の x, y が唯一組存在することが保証される: bx = c, yb = a. 従って代入して
yc = y(bx) = (yb)x = ax.
ここで b = a とすると ax = c, ya = a なのだから y = e'a であって e'ac = ax = c. つまり
e'ac = c … (2).
又 b = c とすると cx = c, yc = a なのだから x = ea であって c = yc = cea つまり
cea = c … (3).
a, c は任意であったから (2) で c = ea, (3) で c = e'a と置くことにより
ea = e'aea = e'a
即ち, a の両側の単位元が存在する。 この a の両側単位元を ea と書くと, (2), (3) から
eac = c, cea = c
即ち, a の両側単位元は, 他の任意の元に関しても単位元として作用する。 単位元は唯一に決まっている。 それは例えば b の単位元 eb に関して (eb も他の任意の元に関しても単位元として作用するのだから) 直ぐ上のことから eb = eaeb = ea だから。□
ここでは公理の数を出来るだけ少なくしたのだが, 一般的な群の定義はここを一応参照してください。
又次のことも分かる
∀a∈ A∃!b ∈ A(ab = ba = e)
この b を a の逆元 inverse element といい a-1 と書く。 明らかに
(a-1)-1 = a, e-1 = e
である。
証明: (1) により ax = ya = e となる x, y が唯一組存在する。 ここで x = ex = (ya)x = y(ax) = ye = y. 故に ax = xa = e□
N や Z±, Q±, R± は群にはならない (後ろ二つには 0 の逆元がない)。 Z, Q, R は + に関して群になる。 Q*, R* は × に関して群になる。
単位元を持つ半群のことをモノイド monoid という。 単位的半群 unitary semi-group ということもある。
二次の正方行列全体を M2(R) と書くが, これは, 加法と積の各々に関して半群となる。 加法に関しては群でもあるが, 積に関しては群にならない。 逆行列を持つ行列だけを集めた
GL2(R) = {x | x ∈ M2(R), det(x) ≠ 0}
を, general linear group (一般線型群) といい, これは群になる。 又 special linear group (特殊線型群)
SL2(R) = {x | x ∈ M2(R), det(x) = 1}
も積に関し群になる。 良く考えてみると SL2(R)⊂GL2(R) である。 このようにある群の部分集合が (同じ演算に関し) 又群でもある場合, これを部分群 subgroup という。
SL2(R) が群になることをちゃんというには, 二次正方行列に関し det(xy) = det(x)det(y) をいう必要がある。 面倒なのでここには書かないが, 各自証明されると良い。
群 (G, ・) は一般には交換法則 a・b = b・a を満たさない。 これを満たす群を可換群 commutative group, 又はアーベル群 abelian group という。 普通可換群は (G, +) として書き, 加法群 additive group という。 これに対し (G, ・) を乗法群 multiplicative group という。