行列と体積


原点 O と, 与えられた一次独立な vectors a1, a2, a3 (ai = (ai1, ai2, ai3)) の作る平行六面体の体積を考える。

求める体積を V, 又 a1, a2 で張られる平行四辺形 (図で紅く塗ってある所) の面積を S と置こう。 この時 S = |a1×a2| = |a1||a2|sin∠(a1, a2) だった。

求める体積は, 図に見られるように

V = S・|a3||cos φ| = |a1×a2|・|a3||cos φ| = abs((a1×a2)・a3) = abs

となる (abs は絶対値をとるという意味)。


ここで, 三つの vectors a, b, c から一つの scalar (a×b)・c を作る操作

[a b c] = (a×b)・c

スカラー三重積 scalar triple product という (この記号 [a b c] を Grassmann 記号と言う)。 行列式の交代性によって

[a b c] = -[a c b] = [c a b] = -[c b a] = [b c a] = -[b a c].

特に, [a b c] = [b c a] から a×bc = b×ca = ab×c. つまり × と ・ を交換出来る。

又, scalar triple product はその三つの vector が張る平行六面体の体積 (に符号をつけたもの) に等しいので, 明らかに

a, b, c が一次従属 ⇔ [a b c] = 0.

さて又, Gram(a, b, c) = [a b c]2 を Gram の行列式 Gramian というが,

Gram(a, b, c) = [a b c]2 = |a b c| =

であり

√Gram(a, b, c) = |[a b c]| = |a×b|・|c||cos φ| = |a||b|sin θ|c||cos φ| = |a||b||c|sin θ|cos φ| ≦ |a||b||c|.

であって, 等号は θ = π/2, φ = 0 の時 即ち abca 言い換えれば a, b, c の張る平行六面体が直方体であるときに限る。 この不等式

√Gram(a, b, c) ≦ |a||b||c|

を Hadamard (アダマール) の不等式という。


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