以下では出て来る文字 ai は全て正の数とする。
n 個の数の和を, その個数で割ったものをそれらの数の相加平均 (算術平均 arithmetic mean) という, ie
(Σi = 1n ai)/n = (a1 + a2 + … + an)/n
が a1, a2, ..., an の相加平均である。
n 個の数の積の n 乗根をそれらの数の相乗平均 (幾何平均 geometric mean) という, ie
が a1, a2, ..., an の相乗平均である。
余り使わないが, n/(Σi = 1n (1/ai)) = n/(1/a1 + 1/a2 + … + 1/an) を a1, a2, ..., an の調和平均 harmonic mean という。
これらの間には次のような関係が成立する。 これを相加平均と相乗平均 (と調和平均) の関係という。
等号は全ての ai が等しい viz, a1= a2 = … = an のとき (しかもその時だけ) に成立する。
実は左半分の不等式 の成立が分かれば, 右半分は, 逆数を取ることによって であることがすぐに分かるので, 左半分 (所謂相加平均と相乗平均の関係) だけを示せばよい。
証明は幾つか知られているが, その大半はこれからやる (やろうとしている) 微分を使う証明なので, 微分を使わない代数的な証明だけをここに掲げておく。 証明は帰納法による。
(a1 + a2)/2 ≧ √(a1a2) ⇔ (a1 + a2) ≧ 2√(a1a2)
だから, このあとの方の不等式を証明すればよい。(lhs = left hand side = 左辺, rhs = right hand side = 右辺)
lhs - rhs = a1 - 2√(a1a2) + a2
=(√a1)2 - 2√(a1)√(a2) +
(√a2)2
=((√a1) - (√a2))2 ≧ 0.
等号成立は (√a1) = (√a2) 即ち a1 = a2 である。
等号の成立は, 最初の部分で 且つ , 次の部分で であるから, 結局, .
2 以上の全ての整数 n に対し, 整数 p が存在して 2p-1 < n ≦ 2p である。 この p を採って m = 2p - n (即ち 2p = m + n) とする。 簡単のため, 以下では An = (Σi = 1n ai)/n = (a1 + a2 + … + an)/n と置く。つまり Σi = 1n ai = a1 + a2 + … + an = nAn である。
さて, i) によって
で, 等号は a1 = … = an = An 即ち a1 = … = an の時。
ここで lhs = (nAn + mAn)/(n + m) = An. より
An ≧ n+m√(a1… anAnm) > 0 (正であるのは大本の仮定による)
であるから両辺を n+m 乗して
Ann+m ≧ a1… anAnm.
An ≧ 0 だから Ann ≧ a1… an. 両辺の n 乗根を求めれば, それが相加平均と相乗平均の関係になっている。■
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