無限大


実数 (大小関係があり, 数直線上にある数。 i = √(-1) という数が登場しない世界) にもう二つだけ, 理想的な要素を付け加える。

定義

∃∞∀a(a∈R ⇒ ∞ > a)

つまり, どのような普通の実数 a よりも大きい 「∞」 というものが存在する。

この要素 「∞」 を (正の) 無限大 infinity という。

どうでもいいことだが, 日本の書籍ではこの ∞ は左右対称なのだが, 西洋の本で見ると右の方が一寸だけ大きい。

さて, 覚えなくてもよいが, この理想的要素 ∞ の雰囲気だけ述べておく: この ∞ はどんな実数よりも大きいのだから, とにかく 「無茶苦茶でっかい数」 であって, 数直線でいうと右の果てにいる数だと思ってよい。

定義 (無茶苦茶でかい数だ) から, 普通の実数 a に対して次が成り立つ。

  1. a + ∞ = ∞.
  2. ∞ + a = ∞.
  3. ∞ - a = ∞.
  4. a > 0 ⇒ a×∞ = ∞, ∞×a = ∞.
  5. a > 0 ⇒ ∞÷a = ∞/a = ∞.

つまり, 普通の数を足したり引いたりしても, 無茶苦茶でっかい数から見れば屁みたいなもん (sorry) だからだし, 2 倍したって 3 倍したって, 或いは 2 で割ったって, 3 で割ったって無茶苦茶でっかいことに変わりはないから, というわけである (最初に注意したように, あくまでも直観的説明であることに注意されたい)

さて, 今の最後の二つの行 (4 と 5) には 「a > 0 の時」 という条件が付いていた。 「a < 0 の時」 即ちマイナスの数を掛けた (り, で割ったりした) らどうなるだろうか。

最初の定義によれば, ∞ > a であるが, この両辺に -1 を掛けると不等号の向きは逆になる (ような気がする) から,

(-1)×∞ < -a

である。 そこで -∞ = (-1)×∞ と (いつものように) 書くことにして, b = -a と思うと

定義

∃(-∞)∀b(b∈R ⇒ -∞ < b)

つまり, どのような普通の実数 b よりも小さい 「-∞」 というものが存在する。

この要素 「-∞」 を負の無限大 (マイナス無限大) という。

この数は 「マイナスの方に無茶苦茶でっかい数」 であって, 数直線の左の果てにいる数である。

さっきと同様にして, 普通の実数 a に対して, 次の性質が成り立つ。

  1. -∞ + a = -∞.
  2. a + (-∞) = a - ∞ = -∞.
  3. a > 0

    a×(-∞) = (-∞)×a = -∞,
    (-a)×∞ = ∞×(-a) = -∞,
    (-∞)÷a = (-∞)/a = -(∞/a) = -∞,
    ∞÷(-a) = ∞/(-a) = -(∞/a) = -∞.

更に次が成立する。

  1. ∞ + ∞ = ∞.
  2. ∞×∞ = ∞.

一寸だけ説明する。

∞ + ∞ = 2∞ と書きたいのは人情である --- そうでもないって ? (笑) しかし, 4 (或いはその後) に書いたように, 無茶苦茶でっかい数は (正の数である限り) 何倍しようが無茶苦茶でっかいのである。 だから ∞ + ∞ = ∞.

10 の方は, 最初の定義から特に ∞ > 0. そして 4 から "a > 0 ⇒ a×∞ = ∞, ∞×a = ∞" だから, "∞ > 0 ⇒ ∞×∞ = ∞". (というのは大分ごまかしているが, あくまでも計算方法を説明しているのだということに留意されたい)

更に ∞×∞ = ∞ の両辺に -1 を掛ければ (-∞)×∞ = -∞, ∞ × (-∞) = -∞ が得られる。 もう一度両辺に -1 を掛けて (-∞)× (-∞) = ∞. (色々出て来たが, 後で纏める)

重要な注意

∞ - ∞ の値は分からない

というのは, 例えば 2×∞ = ∞ でもあるから, 実は ∞ - ∞ = 2×∞ - ∞ = (2 - 1)×∞ = + ∞ かもしれないし, ∞ - ∞ = ∞ - 2×∞ = (1 - 2)×∞ = -∞ かもしれないし, ∞ - ∞ = 0 かもしれない, ∞ - ∞ = (∞ + 3) - ∞ = 3 かもしれない ! (いっておくが今ここに書いたみたいな変な式を書いてはいけない)。

定義

上記の "∞ - ∞" のように, 値の分からない式に関しては, その値が 「不定である indefinite」 といわれ, そういう形の式を不定形という。

定義

実数に +∞ と -∞ を付け加えて 「拡張された実数」 と (ここでは) 呼んでおくことにする。


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