無限大と無限小の計算


これらの無限の空間の永遠の沈黙は私を恐れさせる。

Blaise Pascal (パスカル, 1623 -- 1662)
瞑想録 (Pansées, パンセ) 206.

ここまで見てきたように, 微分と積分は無限の計算というものが扱われている。 今まで limh→0 とか limx→±∞ とかいう記号を, あまり解説せず, 無反省に使ってきたが, 段々苦しくなってきた。 風通の教科書では (ギリシャ以来の伝統に従って) 無限というものを直視しない立場で書かれている。 これが所謂 「標準的立場」 である。

非標準な立場 --- 超準的立場 --- というのがあって, 超準解析 non-standard analysis では無限が直接扱える形になっており, 普通の人が計算するときはこうやって計算していると思われる (が, 特に教育学系統の人はこれを非常に嫌う)。

Robinson がきちんと構築した超準解析は 「きちんと」 構成するために非常に難しくなっており, 記号も統一されていないらしくて読みにくいらしい。 というわけで, ここでは極めて直観的に計算方法だけ示すことにする。 きちんとやりたい人は, 参考文献を見ていただくことにしよう。

尚, ここでやっていることは, 直観的に計算をしやすくしているだけなので, ここで新たに導入した記号, 言葉は一般的に通用しないことがあるのでご注意いただきたい。


  1. 無限大
  2. 無限小
  3. 纏め
  4. 練習問題

本節の参考文献:

H. J. Keisler, Foundations of Infinitesimal Calculus, Prindle, Weber & Schmidt, Boston, 1976. (キースラー 「無限小解析の基礎」 齊藤正彦訳, 東京図書)

A. Robinson, Non-standard Analysis, North Holland Publishing Co., Amsterdam, 1974.

Errett Bishop & Douglas Bridges, Constructive Analysis, Springer, 1985.

A. E. Hurd & P. A. Loeb, An Introduction to Nonstandard Real Analysis, Academic Press, 1985.

(最後の二つの本が読みにくいということについては Ian Stewart (イアン・スチュアート) が 「数学の基礎をめぐる論争」 (田中一之編, 監訳, シュプリンガー・フェアラーク東京) でこぼしているので見てご覧になると良い)


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