加法の定義 2


Introduction の {2] が示しているのは 力 というものが vectors を用いて表されるべき量であるということである。 そして 「複数の力を加える (合わせる)」 ということには明確な意味がある。 つまり, 一つの物体に同時に加えられた力が, ある一つの力と同じ結果を生ずるなら, それが力の和 (加法の結果) ということになるだろう。 この 「力の和」 のことを普通, 物理の力学という分野では合力 (ごうりょく resultant force) と呼んでいる。

合力は実験によって次の平行四辺形則によって定められるものと等しいことが分かっている。

一つの物体に働く (複数の) 力は当然始点が共通の複数の vectors で表されるだろう。 今, A にその物体があるとし, そこに働く二つの力 a, ba = AB, b = AC としよう。 この時, 合力 a + bABCD の対角線 AD で表される。

我々はこれを vectors の加法の第二の定義として採用しよう, 即ち

[定義]

a = AB, b = AC で, ABCD が与えられているとき,
a + b = AD.

この定義も合力と同様, 平行四辺形則と呼ぶことがある。


さて, 我々は vectors の同じ加法に二つの相異なる定義を与えた。 このように二つの異なる定義を与えると, 混乱する人が多く見られる。 どちらを覚えればいいのか ? 結論を言うと, どっちでもいいのである。 数学上で同一のものに二つ以上の定義が与えられていたり, 証明が与えられていたりした場合, どちらを採用しても結局同じことになることが多い。 この 「結局同じ」 というのを数学では 「同値 equivalent」 という。

では加法の定義 1 で与えた定義と, 上記の定義が同値である (結局同じである) ことを証明しよう。 上記の図のように ABCD と a = AB, b = AC = BD としよう。 この時加法の定義 1 で与えた定義によれば a + b = AB + BD = AD を意味しており, 上記の定義では定義のところに書いてあるように a + b = AD である。 即ち二つの定義の何れによっても同一の結果が得られることが分かった。 従って同値である。


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