子供の頃 --- に限らず, 今でもだが --- 滑り台というのが, 幼稚園とか, 公園にあったりする。 そうか, 最近はウォータ・スライダとかいって, プールにもあったりするねぇ。 それから, 一寸考えると, ジェットコースターなんかもそうだが, とにかく, 今挙げたようなものは, 上から滑り降りて来るっていうものだよね。
こういった 「上から滑り降りてくる」 ものっていうのは, 何でも滑り降りてくれば滑り降りてくるほど, 段々その速さが速くなっているよね。 勿論, その速くなり方っていうのは, 斜面がどのくらい傾いているかによるってことは, どこかで習ったか, 習わなくっても何となく分かっていると思う。
さて今, その傾斜角が 54.72° のかなり長い斜面があったとしよう (下の図を見てね)。 問題を複雑にしないために, 摩擦のことは考えないことにする。 この斜面で, 昔ガリレオ・ガリレイがやったように, 一秒毎にどのくらい滑り降りたかを計測したらどうなるか ? 斜面に目盛りがついていたとすれば, 次のような結果を得るはずなのだ。 (以下の計算は Microsoft Excel 2000 を用いている)
時刻 x [秒] | 滑った
距離 (小数第二位まで) |
y [m]
0.0 | 0.00 |
0.1 | 0.04 |
0.2 | 0.16 |
0.3 | 0.36 |
0.4 | 0.64 |
0.5 | 1.00 |
0.6 | 1.44 |
0.7 | 1.96 |
0.8 | 2.56 |
0.9 | 3.24 |
1.0 | 4.00 |
1.1 | 4.84 |
1.2 | 5.76 |
1.3 | 6.76 |
1.4 | 7.84 |
1.5 | 9.00 |
1.6 | 10.24 |
1.7 | 11.56 |
1.8 | 12.96 |
1.9 | 14.44 |
2.0 | 16.00 |
2.1 | 17.64 |
2.2 | 19.36 |
2.3 | 21.16 |
2.4 | 23.04 |
2.5 | 25.00 |
2.6 | 27.04 |
2.7 | 29.16 |
2.8 | 31.36 |
2.9 | 33.64 |
3.0 | 36.00 |
これのグラフを描いてみよう。 いつものように縦軸が y, 横軸が x である。
さて, ここで時刻 1, つまり滑り始めてから 1 秒後の速さを求めてみよう。
前もやったように, 速さの定義は
だったのだから, 滑った距離と, それにかかった時間がわからないといけない。 1 秒後のっていわれたって困るよねぇ。 そこで, 先ず, 1 秒後から, 2 秒後の間で計算してみることにしよう。
上の表を見てみると, 1 秒後の位置は 4.00 m, 2 秒後の位置は 16.00 m だね。 ということは滑った距離は 16.00 - 4.00 = 12.00 [m]。 かかった時間は 2.0 - 1.0 = 1.0 [秒] ということになる。従って, ここでの速さは 12.00 / 1.0 = 12.00 [m/s] だ。 斜線 / は 「割る÷」 っていう意味だよ。 単位 s は英語の second の略で, 秒だね。
さて, じゃぁ次に, 1 秒後から 1.5 秒後で計算してみよう。 1.5 秒後の位置は 9.00 m だね。 ということは滑った距離は 9.00 - 4.00 = 5.00 [m]。 かかった時間は 1.5 - 1.0 = 0.5 [秒]。 ということは, ここでの速さは 5.00 / 0.5 = 10 [m/s] だね。
ここで何か気付かないかな ?
そうだね。 1 秒後から 2 秒後までの速さと, 1 秒後から 1.5 秒後までの速さが違うよね。
そう, 本当はものが斜面を滑るっていう運動は, 速さが瞬間瞬間で皆違っているから, 上の定義の式で計算しても, 本当に 1 秒後の速さを求めることは出来ないんだ。だから 1 秒後から 2 秒後までの速さというのは, 本当は 1 秒後から 2 秒後までの平均の速さと言うべきだったんだね。 (平均という言葉は枕言葉ではなくって, 本当に平均になっているのだけれど, それはここできちんと説明できないから, 後でのお楽しみということにしておく)
じゃぁ, 平均の速さを求めるのに, 段々時間の幅を狭くしていったらどうなるだろう ? というのが次のテーマだ。
先程の表から, 次のような表を作ることができる。 (以下で言う 「距離」 とは 「位置の差」 の意味と理解する事)
x | y | 距離 | 時間の差 | 平均の速さ |
0.0 | 0.0 | -4.0 | -1.0 | 4.0 |
0.1 | 0.0 | -4.0 | -0.9 | 4.4 |
0.2 | 0.2 | -3.8 | -0.8 | 4.8 |
0.3 | 0.4 | -3.6 | -0.7 | 5.2 |
0.4 | 0.6 | -3.4 | -0.6 | 5.6 |
0.5 | 1.0 | -3.0 | -0.5 | 6.0 |
0.6 | 1.4 | -2.6 | -0.4 | 6.4 |
0.7 | 2.0 | -2.0 | -0.3 | 6.8 |
0.8 | 2.6 | -1.4 | -0.2 | 7.2 |
0.9 | 3.2 | -0.8 | -0.1 | 7.6 |
1.0 | 4.0 | |||
1.1 | 4.8 | 0.8 | 0.1 | 8.4 |
1.2 | 5.8 | 1.8 | 0.2 | 8.8 |
1.3 | 6.8 | 2.8 | 0.3 | 9.2 |
1.4 | 7.8 | 3.8 | 0.4 | 9.6 |
1.5 | 9.0 | 5.0 | 0.5 | 10.0 |
1.6 | 10.2 | 6.2 | 0.6 | 10.4 |
1.7 | 11.6 | 7.6 | 0.7 | 10.8 |
1.8 | 13.0 | 9.0 | 0.8 | 11.2 |
1.9 | 14.4 | 10.4 | 0.9 | 11.6 |
2.0 | 16.0 | 12.0 | 1.0 | 12.0 |
この表で, 1 秒後の所だけが空欄になっているけれども, 意味は明らかだと思う。というのは, 時間の差も距離も 0 だから, 速さの公式に入れると 0 / 0 で禁じ手になっちゃうから, 空欄になっているのですね。
さて, 上の表を見ても, まだ 1 秒後の本当の速さは何なのか想像できる範囲にないような気がしません ?
そこで, もう少し理論的に位置を式で求めて, 更に計算をしてみることにしましょう。
最初の x と y の表とグラフを詳しく調べてみると, 実はこの二つの間には y = 4x 2 という関係式が成り立っていることが分かるんだね。そこで, これを用いて, もっと時間間隔を狭く取ったらどうなるかを表にしてみよう。
x | y | 距離 | 時間の差 | 平均の速さ |
0.90 | 3.2400 | -0.7600 | -0.10 | 7.60 |
0.91 | 3.3124 | -0.6876 | -0.09 | 7.64 |
0.92 | 3.3856 | -0.6144 | -0.08 | 7.68 |
0.93 | 3.4596 | -0.5404 | -0.07 | 7.72 |
0.94 | 3.5344 | -0.4656 | -0.06 | 7.76 |
0.95 | 3.6100 | -0.3900 | -0.05 | 7.80 |
0.96 | 3.6864 | -0.3136 | -0.04 | 7.84 |
0.97 | 3.7636 | -0.2364 | -0.03 | 7.88 |
0.98 | 3.8416 | -0.1584 | -0.02 | 7.92 |
0.99 | 3.9204 | -0.0796 | -0.01 | 7.96 |
1.00 | 4.0000 | 0.0000 | 0.00 | |
1.01 | 4.0804 | 0.0804 | 0.01 | 8.04 |
1.02 | 4.1616 | 0.1616 | 0.02 | 8.08 |
1.03 | 4.2436 | 0.2436 | 0.03 | 8.12 |
1.04 | 4.3264 | 0.3264 | 0.04 | 8.16 |
1.05 | 4.4100 | 0.4100 | 0.05 | 8.20 |
1.06 | 4.4944 | 0.4944 | 0.06 | 8.24 |
1.07 | 4.5796 | 0.5796 | 0.07 | 8.28 |
1.08 | 4.6656 | 0.6656 | 0.08 | 8.32 |
1.09 | 4.7524 | 0.7524 | 0.09 | 8.36 |
1.10 | 4.8400 | 0.8400 | 0.10 | 8.40 |
この表を見てみると, 何となく 1.00 秒後のいわば瞬間の速さは, 何となく 8.00 m/s になりそうな気がしないかい ?
しかしここで二つの問題が持ち上がる。
どっちの問題にも解決策がある。 それは次のページで見てみよう。