区間 [a, b] で 函数 y = f(x) が下に凸 とは a ≦ x1 < x < x2 ≦ b の全ての x1, x2, 及び x に関して,
… (1)
なること, つまり, (x1, f(x1)), (x2, f(x2)) を結んだ直線より, x がその間にある, 函数上の点 (x, f(x)) が下にあることである。 例えば, y = x2 は下に凸である。 尚, 解析学では黙って凸と言えば, それは上に凸のことである。
式 (1) に於いて, 不等号 ≦ を逆に ≧ にしたものが成り立つとき, これは上に凸であるといわれる。 例えば y = -x2 は上に凸である。 尚, 解析学ではこれは凹 (おう) であるといわれる。
(1) と (f(x) - f(x1))(x2 - x1) ≦ (f(x2) - f(x1))(x - x1) は同値 --- つまり数学的内容が一致している。 同様に (f(x) - f(x2))(x2 - x1) ≦ (f(x2) - f(x1))(x - x2) が成立するが 両辺に -1 を掛けて (f(x2) - f(x1))(x2 - x) ≦ (f(x2) - f(x))(x2 - x1) でもある。 これらを纏めて
… (2)
である。
さて, 函数 y = f(x) は少なくとも二階微分可能とする。 もしも f''(x) ≧ 0 であったら, これは何を意味するであろうか。
f''(x) = (f'(x))' であるから, f''(x) は f'(x) の増減を示しており, 仮定 f''(x) ≧ 0 は f'(x) が増加していることを意味している。
(2) の不等式で考える。 Lagrange の平均値の定理から x1 < c1 < x が存在して (2) の左辺 = f'(c1) である。 同様に, 右辺の方も, x < c2 < x2 が存在して 右辺 = f'(c2) である。 仮定から f''(x) ≧ 0 であったから f'(c1) ≦ f'(c2). これが下に凸を示している。 逆も同様である。
従って次の定理を得る。
定理
f''(x) が存在すれば, 区間内で常に f''(x) ≧ 0 であることと f(x) は下に凸は同値。
上に凸も同様。
上の証明から次のことも分かる。 全て下に凸の場合しか書いてないが, 上に凸も同様である。 下に出てくる近傍 neibourhood とは 「近く」 という意味である。
系 1
f(x) が微分可能な下に凸である函数ならば, 函数 y = f(x) はその曲線上の接線の下側には出ない。
系 2
函数 f(x) が一点 x = a の近傍で少なくとも二階微分可能で f'(a) = 0, f''(a) > 0 ならば f(a) は極小値, 又 f'(a) = 0 で, f''(a) < 0 は極大値。
ついでに f'(a) = 0 で, f''(a) = 0 だったらどうなるかについても一言述べておく。
定理
函数 y = f(x) は x = a の近傍で少なくとも n 階まで微分可能で f(n)(x) が連続であり,
f'(a) = f''(a) = …… = f(n - 1)(a) = 0, f(n)(a) ≠ 0
とする。
証明:
Taylor展開することによって
f(x) - f(a) = f(n)(c)(x - a)n/n!.
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さて, x = a に於いて, f''(a) = 0 であって, f(a) が極大でも極小でもない場合は, f''(x) は x = a の前後で符号を変える。 ということは函数 y = f(x) の graph も凹凸の状況が変わるということである。 従ってこの点を変曲点 point of inflection という。 変曲点で接線を引くと, 元の graph はこの接線によって左右 (又は上下) に分断される。