弧度法


物には色々な量が付随している。 長さであるとか, 重さであるとか, 容積 (体積) であるとか...。 そしてその各々にそれを測る単位がついている。

単位は一種類というわけではない。 例えば長さだが, 普通は m (メートル) を使っている。 もしかすると 「そうじゃないよセンチだよ」 という人もあるかもしれないが, センチ (c) というのは百分の一を示す 「接頭辞」 というものに過ぎないので, よく考えればそれは cm であるから, m の一種であると思うことにする。

その他にどういう単位があるか ? 違う単位を探したければアメリカに行くと良い。 アメリカは二言目には global standard 等と言うくせに, 物の単位については国際化に反した行為を取っているのだから (笑)。

彼らが使う単位は何かというと, 曰く, フィート (1 ft ≒ 30.48 cm), マイル (1 mile ≒ 1.609 km) などが日常的に使われている。 ゴルフではヤード (1 yard ≒ 0.9144 m) が日常的に使われ, 印刷の世界と TV やコンピュータのディスプレイ画面の大きさにはいまだにインチ (1 in ≒ 2.54 cm) が用いられている。 更に活字の大きさの単位はポイント (1 point ≒ 0.3514mm) が使われている。 Donald E. Knuth (クヌース) の書いた TeXbook (テフブック) には, 我々の知らない, 印刷方面で使われる不思議な名前の長さの単位が沢山出てくる。 又日本でも寸 (約 3.03 cm) や尺 (約 30.3 cm) や間 (約 18.18 m) 町 (約1090.8 m) 等がある。

重さの単位にも, グラム (g) の他にオンス (1 oz ≒ 28.35 g) 等の単位を缶詰などで時々見かけたりする。

枕が長すぎた。 そろそろ本題に入ろう。

長さや重さの単位に色々あるように, 角度の単位にも実は色々ある。 私の知る限り少なくとも三通りあるが, 細かいことはともかくとして, 必要なことだけ述べる。

先ず, よく知られているのは直角を 90 度とする測り方である。 尤も, これは一周を 360 度としているのだという説があり, 基準が何かは分からない。 因みに, 一周 360 度説は, 一年がほぼ 360 日だからだというのがその根拠だが, 私は, これはバビロニア人の偏執狂とも言える 60 分割法へのこだわりから言って, 正三角形の一つの内角を 60 度と決めたのではないかと疑っている。

この直角を 90 度とする測り方を度数法という。 度数法では正確には 1 度の 1/60 を分 (′), その又 1/60 を秒 (″) といい, 例えば,  30 度 21 分 50 秒という角度を 30° 21′50″と書く。 更にその下まで正確に表したいときは, 例えば 50.23″のように, 秒以下は小数で表記している。 最近ではこれを矛盾と思うのか, 最初から 30.3472861° のように表記していることが多い。

直角を 100g (グラードと読む) とする測り方もある。 これはフランスでメートル法を導入し (これまた偏執狂的に) 何でも十進法で表そうとしたときに導入されたのだが, 角度と時間だけは十進法は流行らなかったようである。

さて, 数学で本式には角度は弧度法と呼ばれる方法で測る。 弧度法というのは, 角を作っている二本の線の交わっているところを中心とし, 単位長 (長さ 1) を半径に持つ円 (それを単位円 unit circle という) を描いたとき, その角が切り取る扇形の面積 S の 2 倍で角度を測ったものである。 単位はラジアン (radian) で, 表記するとすれば rad と書くが, 数学ではこれを書かない。

これは随分持って回った言い方だが, 矛盾が起こらないように言ったので, 伝統的な言い方に直すために, 次のようなことを考える。

扇形の弧の長さ l と面積 S とは比例している。 半径 1 の円の面積を円周率 (と通常呼ばれている値) π (細かい値が知りたい人はここ) に定めると, この後にやる細かい微分積分の計算によって, 半径 r の円の円周の長さは, 2πr となることが分かる。 従って単位円の一周が 2π である。 その半分が平角 (180°) である。 従って弧度法でいうと, 平角から π = 180°. 更に意味を考えると, 1 rad とは, 半径と同じ長さの弧を持つ扇形の中心角ということになる (面積中心の述べ方をすると, 半径の半分の面積を持つ扇形の中心角)。

弧度法と度数法の間の単位の換算法を述べておこう。 基本は先程の  π = 180° である。 弧度法で x である角度と, 度数法で y° である角度が同じであるとき, それらの間には

x : y = π : 180

という関係がある。

例えば, 30° が弧度法でいうとどうなるかというと

x : 30 = π : 180

なので, 所謂 「比例式に於ける内項と外項の関係」 から

180x = 30π.

∴ x = 30π/180 = π/6.

即ち 30° = π/6 である。

あとでよく使う角度について, 角度の換算表を作っておこう。 (各自確かめておくこと)

0 30 45 60 90 120 135 150 180
radian 0 π/6 π/4 π/3 π/2 2π/3 3π/4 5π/6 π

この表を見ていると radian で測ると, まるで π が単位であるかのように見える。 勿論事実はそうではない。


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