定積分


ここまでの所の用語等をきちんと整理しておこう。

{x | 条件} で, 条件を満たす数 x の集まり (集合 set) を表す。

相異なる二つの (実) 数 a, b (但し a < b) に対し
[a, b] = {x | a ≦ x ≦ b},
(a, b] = {x | a < x ≦ b},
[a, b) = {x | a ≦ x < b},
(a, b) = {x | a < x < b},
を (有限) 区間 (finite) interval という。 特に [a, b] を閉区間 closed interval, (a, b) を開区間 open interval という。

[a, ∞) = {x | x ≧ a}, (-∞, b] = {x | x ≦ b}, (a, ∞) = {x | x > a}, (-∞, b) = {x | x < b}, (-∞, ∞) を無限区間 infinite inteval という。特に (-∞, ∞) はすべての (実) 数を表している。

函数 y = f(x) は区間 [a, b] 上定義されているとする。 このとき細分 a = x0 < x1 < x2 < …… < xn-1 < xn = b を考え, その幅を dxi = xi - xi-1, i = 1, 2, ... , n, とする。 区間の幅 dxi がどれも小さくなるように, 分割を無限に細かくするときに和 f(x1)dx1 + f(x2)dx2 + …… + f(xn)dxn が分割の取り方に無関係に一定値に近付いていくとするならばこれを記号 = ∫ab f(x)dx で表し, 函数 f(x) の区間 [a, b] 上 (または a から b 迄の) 定積分 definite integral という。 このとき, 函数 f(x) は [a, b] 上積分可能 (または可積分, 可積) という。 区間 [a, b] を積分区間 integral interbal, f(x) を被積分函数 integrand, x を積分変数 integral variable という。 ∫ab の a をこの定積分の下限 (または下端), b を上限 (または上端) という。

函数 y = f(x) は区間 [a, b] 上 f(x) ≧ 0 を満たしているとする。 このとき特に, 定積分 ∫ab f(x)dx は y = f(x) のグラフと x 軸, 直線 x = a, x = b で囲まれた部分の面積となる。


記号の約束:

ab f(x)dx = -∫ba f(x)dx,
aa f(x)dx = 0.


次のような性質は定義から明らかであろう。 ここでは a < b とは限らない。

(0) [積分変数の任意性]
ab f(x)dx = ∫ab f(t)dt = ∫ab f(s)ds = …….

積分変数として何を用いても, 面積が変わるはずはないから。

(1) [積分区間の加法性] c を任意の定数として
ab f(x)dx = ∫ac f(x)dx +∫cb f(x)dx

面積が分割可能ということ (上図)。 被積分函数を何度も書くのが面倒なので, 屡々 ∫ab f(x)dx = ∫ac  +∫cb f(x)dx と書かれる。

(2) f(x), g(x) が [a, b] 上積分可能ならば
ab (f(x) + g(x))dx = ∫ab f(x)dx + ∫ab g(x)dx.

これは定義に戻って和を考えてみればいい。 分配法則みたいなものだね。

(3) 再び C が x に無関係な定数ならば
ab Cf(x)dx = C∫ab f(x)dx.
特に ∫ab Cdx = C ∫ab dx = C(b - a).

これも定義に戻って和を考えてみればいい。

上記の (2), (3) を併せて定積分の線型性 liniarity という。


さて, 定積分の計算を容易にする為に次のようなことを考えよう。 簡単の為に函数 y = f(x) は区間 [a, b] 上連続で (つまりグラフがつながっていて) f(x) > 0 を満たしているとする。 今 a < x < b として

S(x) =∫ax f(t)dt

(因みにこのように定積分で表された函数を積分函数という。) 即ち, S(r) は函数 y = f(x) のグラフと x 軸, 直線 x = a, x = r で囲まれた部分の面積である。 簡単の為に h > 0 を充分小さい数とする (h < 0 でも同様)。 このとき S(x + h) - S(x) = ∫xx+h f(t)dt は図に黄色で示したような細い帯状の部分である。

ここで区間 [x, x + h] 上の函数 y = f(x) の最大値を M, 最小値を m とすると, 明らかに

mh ≦ S(x + h) - S(x) ≦ Mh

即ち (h > 0 だから)

であるが, ここで, h → 0 とすると, 区間 [x, x + h] は一点 x になってしまうので, ここでの最大値 M も最小値 m も同じ値 f(x) に近付くはずである。 即ち, 微分の定義から

f(x) ≦ S'(x) ≦ f(x)

即ち S'(x) = f(x).

さて, F'(x) = S'(x) = f(x) としよう。このとき, 微分法の定理により, ある定数 C が存在して S(x) = F(x) + C と書ける。 即ち

ax f(t)dt = F(x) + C

であるが, 記号の約束によって x = a のとき

0 = ∫aa f(t)dt = F(a) + C

即ち C = - F(a) でなければならない。 つまり

ax f(t)dt = F(x) - F(a).

元に戻ると次の定理を得る。

[微分積分学の基本定理]
函数 y = f(x) は区間 [a, b] 上連続で, F'(x) = f(x) とする。 このとき

ab f(x)dx = F(b) - F(a).

実際の計算の際には, 便宜の為に

という記法が取られることが多い。即ち

という書き方が取られる。 前は不思議に思ったかもしれないが, これで前の記号の約束 ∫ab f(x)dx = -∫ba f(x)dx, ∫aa f(x)dx = 0 は自然な約束だって分かったでしょう ?


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