区分求積法


我々は今や (Riemann) 積分の定義は Riemann 和に拠ることを学んだのであるから, 特に函数 f(x) が区間 [0, 1] で連続である場合に, それを等分割した場合の和の極限,

limn→∞ (1/n)Σk=1n f(k/n)

はその特殊な場合に過ぎないから, 容易に ∫01 f(x) dx に収束することが見て取れよう。 即ち (Σ の外の) 1/n→dx, (Σ の内側の f(k/n) の k/n の方の) 1/n→0, n/n→1 となることを利用するのである。 勿論場合によっては置換, 補間を必要とすることもある。 もう一度書くと

これを通常区分求積法 quadrature by parts (or mensuration by parts) と呼ぶ。


例:

(1) limn→∞ (1/n2 + 2/n2 + 3/n2 + … + n/n2)
= limn→∞ (1/n)(1/n + 2/n + … + n/n) = limn→∞ (1/n)Σk=1n k/n
= ∫01 x dx = [x2/2]01 = 1/2.

(2)
 
= [2x3/2/3]01 = 2/3.

(3) limn→∞ Σk=1n 1/(n + k)
= limn→∞ Σk=1n 1/(n(1  + k/n))
= limn→∞ (1/n)Σk=1n 1/(1 + k/n)
= ∫01 dx/(1 + x) = [log (1 + x)]01 = log 2.

(4) limn→∞ Σk=13n 1/(2n + k)
=  limm→∞ Σk=1m 1/(2m/3 + k) ← m = 3n と置いた
= limm→∞ Σk=1m 3/(2m + 3k)
= limm→∞ (1/m)Σk=1m 3/(2 + 3k/m)
= ∫01 3dx/(2 + 3x) = ∫01 dx/(2/3 + x) = [log (2/3 + x)]01
= log (2/3 + 1) - log(2/3) = log 5/3 - log 2/3 = log (5/2).
[別解]
与式 = limn→∞ (1/n)Σk=13n 1/(2 + k/n)
= ∫03 dx/(2 + x) ← Σ 上端の k = 3n の時 k/n = 3 であるから積分の上端も 3.
= [log (2 + x)] 03 = log 5 - log 2 = log (5/2).

注: これは置換の例。

(5) limn→∞ (1/(2n + 1) + 1/(2n + 3) + … + 1/(2n + (2n - 1)))

= limn→∞ [(1/(2n))Σk=1n 1/(1 + k/(2n)) - (1/(2n))Σk=1n 1/(1 + k/n)]
= ∫01 dx/(1 + x) - (1/2)∫01 dx/(1 + x) = (1/2)∫01 dx/(1 + x) = (1/2)[log (1 + x)]01 = (1/2)log 2.

注: これは補間の例。

(6)

これは対数をとる例である。

任意の n > 0 で, (1/n)((2n)!/n!)1/n > 0 であるから
log (1/n)((2n)!/n!)1/n = log ((2n)!/(nn・n!))1/n = (1/n)log((2n)!/(nn・n!))
= = (1/n)log[(1 + 1/n)(1 + 2/n) … (1 + n/n)]
= (1/n)Σk=1n log(1 + k/n)
→ ∫01 log (1 + x) dx = [(1 + x) log (1 + x)]01 - ∫01 dx = 2log 2 - 1.
ここで函数 f(x) = log x は x > 0 で連続だから (exp(x) = ex である)
limn→∞ [(1/n)((2n)!/n!))1/n] = exp(log limn→∞ [(1/n)((2n)!/n!))1/n])
= exp(limn→∞ log[(1/n)((2n)!/n!))1/n]) = exp(2log 2 - 1) = e2log 2 - 1
= (elog2)2e-1 = 22/e = 4/e.


練習: 次の各々の極限を求めよ。

(1) limn→∞ Σk=1n (1/n)sin(k/n).

(2) limn→∞ (1/(n + 2) + 1/(n + 4) + 1/(n + 6) + … + 1/(n + 2(2n)).

(3) limn→∞ (1/n3)(12 + 22 + … + n2).

(4) .

(5) limn→∞ Σk=1n k/(n2 + k2).

(6) limn→∞ Σk=0n (1/n)cos(πk/(2n)).

(7) limn→∞ Σk=1n+1 n/(n2 + k2).

(8) .

(9) limn→∞ Σk=1n 1/(n + (2k - 1)).

(10) limn→∞ [(1 + 2/n)(1 + 4/n)(1 + 6/n)…(1 + 2n/n)]1/n.

略解:

(1) 1 - cos 1, (2) (1/2)log 5, (3)1/3, (4) 1/2, (5) (1/2)log 2, (6) 2/π, (7) π/4.
(8) 先ず分子分母を 1/(2n) 倍してから, 分子と分母で別々に区分求積法を用いる。 6/7.
(9) (1/2)log 3, (10) 対数をとって考える。(√27)/e.


私は今まで普通に区分求積法を用いて極限の計算をしていたわけで, 積分計算をするときいちいち 「微分積分学の基本定理によって」 と断らないように 「区分求積法によって」 と断ることなしに計算を進めていた。

ところが, 伝え聞くところに拠れば, 2004 年の東北大学の採点基準ではこれはまずいということである。

前期, 理系三番 (区分求積法) は, 標準的な問題。 答案作成の時, 区分求積法を使用することや, log や exp の連続性についての説明が欲しかった。 何も言わずに, いきなり計算にいった受験生は, 減点された。

じゅっきょう 数学資料 No. 49.
〜第五十三回大学入試懇談会報告〜
平成 16 年度入試を振り返って
栃木県立栃木高等学校教諭 綾川光夫
による

というわけなので, 今後は (少なくとも東北大学を受験するときには) 黙って区分求積法を用いてはいけないということである。

Sunday, 21st November, 2004.


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