函数というのは数から数への対応 y = f(x) (或いは f: x → y) であった。
この x の部分が自然数 (正の整数) n に限定されたものを数列 sequence という。 つまり, n に対し, 数 an を対応させる規則が与えられているとき, それが数列 {an} である。 今書いたように, 数列の構成要素である一つ一つの数は, n 番目を an, bn などと書き, 数列全体は {an}, {bn} などと書くのが通例である。
従って, 数列は a1, a2, a3, a4, ...... , an, ...... のように数が並んでいるものである。 (場合によっては a0 から始めることもあるが, 特に断らない限り a1 から始めることにする)
と書いたが, 本当は英語の 「数列 sequence」 は 「列」 という概念は含んでいるが, 「数」 とは特に断ってはいない。 だから, 実は数が並んでいなくても良い。 点が並んでいても sequence だし, 函数が並んでいても sequence である。
英語では 「数の」 列であるときは sequence of numbers, 「点の」 列であるときは sequence of points (日本語では点列), 「函数の」 列であるときは sequence of functions (日本語では函数列) 等という。
さて, 数列 {an} の一つ一つの数, a1, a2, a3, a4, ...... , an, ...... をこの数列の項 term という。 a1 を第一項 (或いは特に初項 the initial term), a2 を第二項, a3 を第三項, ......, an を第 n 項という。
n が例えば 100 までとか, 1000 までとかのように, 有限で終わっている数列のことを有限数列といい, n の大きさに限定をつけない数列を無限数列という。
有限数列の場合, 数列の最後の項というものが存在する。 それを末項 the last term という。
数列は, n から an への対応規則が与えられてさえいればよいのだが, 有限数列の場合, (有限だから) どのような無茶苦茶な並びであっても, k 番目の数はこれ, という対応表さえ与えられていれば, 規則が与えられていると言えてしまう。 従って, 有限数列はあまり数学的研究の対象となり得ない (後述)。 多くの場合, 有限数列で興味があるのは無限数列の最初の部分だけが切り取られている場合なのである。 従って専ら調べるのは無限数列ということになる。
無限数列も非常に多岐に亙っており, 難しいのであるが, ここでは an が単純な n の式で表されるものを主に扱う。 つまり an = f(n) の様に, 式で表されれば, 誰でも文句なく, その式が規則だと言えるし, n が何万, 何億という大きさになろうとも (原理的には) 直ちに計算できるからである。
ところで一番単純な数列 {a}, つまり a, a, a, a, ..., a, ... と同じ数 a が無限に並んでいる数列には名前が付いていて, 定数列 constant sequence と呼ばれている。
私が非常に下らない問題だと思っているものの一つに, 「次のように一定の規則で数が並んでいるときに, 空欄を埋めなさい」 のような問題がある。 しかし, そのような問題は実は何を入れても正解になる。 というのも (仮に, そのような規則を式で書け, といわれたとしても) そのような規則をきちんと書くことが出来るからである。
というのも k 個の互いに異なる番号と, その時の数列の値が与えられているとき, k - 1 次式 f(n) で an = f(n) と表せる, からである。 これを補間公式という。 有名なものに Lagrange (ラグランジュ) のものと, Newton のものとがあるので, 各々紹介する。
次の形は van der Waeder Algebra vol. I からとってきたものである。
Lagrange's Interpolation Formula
互いに異なる n + 1 個の数 αk, k = 0, 1, 2, ... n と, その時の値 f(αk) が与えられていたとする (f(αk) の方は同じ値があっても良い)。 このとき高々 n 次の式 f(x) (i.e. deg f ≦ n) が存在して, その式は
これが実際に条件を満たしていることは, 代入してみれば分かる
Newton's Interpolation Formula
上記と同様の条件下で
f(x) = λ0 + λ1(x - α0) + λ2(x - α0)(x - α1) + … + λn+1(x - α0)(x - α1)…(x - αn).
こちらの係数 λk は次のようにして求める。
λ0 = f(α0) はすぐに分かる。
x = α1 を代入してみると, f(α1) = λ0 + λ1(α1 - α0) = f(α0) + λ1(α1 - α0). 従って λ1 = (f(α1) - f(α0))/(α1 - α0).
x = α2 を代入してみると, f(α2) = λ0 + λ1(α2 - α0) + λ2(α2 - α0)(α2 - α1) で λ0, λ1 は分かっているので, λ2 は移項して割算すれば求められる。
以下同様にして, 少しずつ求まっていくのである。 実はこれはあとでやる 「階差数列」 と関係していることが分かる。