[定理: 線型性]
二つの級数 Σn=1 ∞ an, Σn=1 ∞ bn が相共に収束して, その和が各々 A, B であるとき, 級数 Σn=1 ∞ (pan + qbn) も収束してその和は pA + qB になる。
[証明]
Σn=1 ∞ (pan + qbn) の第 n
部分和を Sn とすると,
Sn = Σk=1 n
(pak + qbk) = p Σk=1 n
ak + q Σk=1 n
bk.
ここで Σk=1 n ak, q Σk=1 n bk は各々 Σn=1 ∞ an, Σn=1 ∞ bn の第 n 部分和であるから, それらを An, Bn と置くと, limn→∞ An = A, limn→∞ Bn = B であるから,
S = limn→∞ Sn = limn→∞ (pAn + qBn) = pA + Bq□
注:
1. 二つの級数 Σn=1 ∞ an, Σn=1 ∞ bn が両方とも収束しなければ上記の定理は使えない。
2. 上記の定理の意味するところは, 二つの級数が収束するときに, 括弧で括ったりはずしたりが自由にできるということである。
3. 上記の注 2 を逆に見ると, Σn=1 ∞ an, Σn=1 ∞ bn の少なくとも一方が発散する場合には, 勝手に括弧で括ったりはずしたりしてはいけないということを意味している。
例) 次の各々の無限級数の収束, 発散を調べ, 収束する場合にはその和を求めよ。
(1) Σn=1 ∞ (1 + 3n)/4n.
(2) Σn=1 ∞ (2n - 1)/3n.
(3) Σn=1 ∞ (2n + 4n)/3n.
(4) 2 - 2 + 2 - 2 + …….
(5) (2 - 2) + (2 - 2) + …….
(6) 1 - 1/2 + 1/2 - 1/3 + 1/3 - 1/4 + … + 1/n - 1/(n + 1) + 1/(n + 1) - …….
(7) (1 - 1/2) + (1/2 - 1/3) + (1/3 - 1/4) + … + (1/n - 1/(n + 1)) + …….
(8) 2 - 3/2 + 3/2 - 4/3 + 4/3 - 5/4 + 5/4 + … + (n + 1)/n - (n + 2)/(n + 1) + (n + 2)/(n + 1) - …….
(9) (2 - 3/2) + (3/2 - 4/3) + (4/3 - 5/4) + … + ((n + 1)/n - (n + 2)/(n + 1)) + …….
解:
(1) 与式 = Σn=1 ∞ ((1/4)n + (3/4)n). ここで Σn=1 ∞ (1/4)n は初項 1/4, 公比 1/4 の無限等比級数なので収束してその和は (1/4)/(1 - 1/4) = 1/3, Σn=1 ∞ (3/4)n は初項 3/4, 公比 3/4 の無限等比級数なので収束してその和は (3/4)/(1 - 3/4) = 3 (以下このような考察は省略する) なので, 問題の級数は収束して, その和は 1/3 + 3 = 10/3.
(2) 与式 = Σn=1 ∞ ((2/3)n - (1/3)n) = (2/3)/(1 - 2/3) - (1/3)/(1 - 1/3) = 2 - 1/2 = 3/2.
(3) (2n + 4n)/3n = (2/3)n + (4/3)n) → ∞ より発散する。
(4) m を自然数として, n = 2m - 1 の時, 第 n 部分和 Sn
= 2; n = 2m の時 Sn = 0 だから発散する。
[別解] a2m-1 = 2, a2m = -2 より発散する。
注: この数列の一般項は an = 1 - (-1)n と書くことが出来る。 だから Sn も n の式としてちゃんと書けるが面倒なので省略する。 以下も同様。
(5) Sn = 0 なので収束して和は 0.
(6) m を自然数として, n = 2m - 1 の時, Sn = 1; n = 2m の時, Sn = 1 - 1/(m + 1) → 1 (as m→∞). 従って, 収束して和は 1.
(7) Sn = 1 - 1/(n + 1) → 1 (as n→∞) より収束して和は 1.
(8) a2m-1 = (m + 1)/m = 1 + 1/m → 1 (as m → ∞); a2m = -(m + 2)/(m + 1) = - (1 + 2/m)/(1 + 1/m) → -1 (as m → ∞) より, 問題の級数は発散する。
(9) Sn = 2 - (n + 2)/(n + 1) = 2 - (1 + 2/n)/(1 + 1/n) → 2 - 1 = 1 (as n → ∞) より収束してその和は 1.