Introduction の [1] が要求していることは 「どこからどこまでか」 ということである。 つまり vector AB とは 「A から B 迄」 の移動を表していると考えられる。 定義によって vectors は位置には関係していないので, vector AB が指定する移動というのは平面上の点 「全て」 が AB の分だけ移動していくことを意味している。 これは数学で 「平行移動」 と呼ばれる移動のことを指していることになる。
さて, a = AB と b との加法, つまり a + b をこの場合について考えてみることにする。
Vector a = AB が A から B までの移動と考えられれば, これに vector b が示す移動を 「加える」 とはどういうことを考えるのが最も自然であろうか ?
普通 A から B まで動いたとすれば, その次は B からどこかへ動くと考えるのが最も自然であろう。 そこで, b を 「B から」 の移動に翻訳するために, b の始点が B に一致するように平行移動し, この時の b の終点を C とする。 即ち b = BC.
このように表されているとき, a は 「A から B 迄の移動」, b は 「B から C 迄の移動」 となっている。 従って a + b の, この場合の自然な解釈は 「A から B 迄移動して, その後に B から C 迄移動した」 その結果ということになるだろう。
この文を読んだ上での自然な解釈では 「その結果」 というのは当然 「A から C 迄の移動」 ということになるだろう。 これを vector に翻訳すれば, それは AC ということになるだろう。
我々はこれを加法の第一の定義として採用しよう。 即ち
[定義]
a = AB, b = BC の時,
a + b = AB + BC = AC.
尚, この定義のことを, vectors の加法に関する繋ぎ合わせの法則と呼ぶことがある。
ここで一つの technique について述べよう。 上記定義の下式のあとの方の等号 AB + BC = AC は点 B が別に B 以外の点でも成立するということである。
このことは vectors の加法を移動として捉える限りに於ては, 途中どこを通ったかということを全く問題にしない, 「どこからどこまで」 ということだけが問題になっているということである。
このことをもう一度法則として書いておこう。
法則 [縮約律]
A□ + □C = AC
即ち中央の同じ文字同士は消える。
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