一つの vector a を定めて, vector x との内積を採り x・a という数が与えられることを考える。 この時
x → x・a
という対応は, 平面の vectors から実数への対応を与えている。 この対応を (あたかも函数のように)
f(x) = x・a
と書くことにすると, この対応は次の二つの性質を持っている。
∀k ∈ R(f(kx) = kf(x)),
f(x + y) = f(x) + f(y).
この二つの性質を線型性 liniarity という。 この二つを纏めて
∀k∀m∈ R(f(kx + my) = kf(x) + mf(y))
と書いても同じことである。 この対応 f は最初に定めた vector a によって決まっている。 そこでこの f のことを a* と書いて a の双対ベクトル dual vector と呼ぶ。 この双対ベクトルは内積によって定まっているので, ka* も a* + b* = (a + b)* も線型性を持っていることが分かる。 つまり双対ベクトルの scalar 倍, 加法減法が定まるので, (名前だけではなく) 双対ベクトルは実際に vector であると考えて良い。 従ってこの双対ベクトルの作る空間を双対ベクトル空間 dual vector space という。
上記の双対ベクトルに見られるように, 数と数との対応関係である函数の拡張として, 自然に集合と集合との間の対応関係というものが考えられる。 この対応関係 f が (あたかも函数のような) 次の性質を満たすとき, この関係を写像 mapping という。
∀x ∈ A ∃!y∈ B: f(x) = y.
本章ではこのようなもののうち線型性を満たすものだけを考える。