一般に写像 f: A→B に対し y = f(x) が成り立つとき, y を f による x の像 image, x を f による y の原像 (又は逆像) inverse image という。
写像 f が特に同一の集合間の対応 f: A→A となっているとき, これを又 A の上の変換 transformation とも呼ぶ。 この変換 f が線型性を持つとき, これを一次変換 (線型変換) linear transformation 又は一次写像 (線型写像) linear mapping と呼ぶ。 即ち R 2 の場合
f: R 2→R 2 : ∀k∀m∈ R∀x∀y∈ R 2(f(kx + my) = kf(x) + mf(y)).
線型変換と呼ぶのは線型性を持っているからであるが, 何故これを一次変換と呼ぶのかというと, それは定数項のない一次関数 y = ax と同じ性質を持つからである。 因みに二次変換 quadratic transformation というのはあるのかというと, 実はある。 が, それはとても難しい。 上野健爾著 「代数幾何入門」 岩波書店, 1995 が分かり易いと思われるので, 興味のある読者にはそちらを参照していただくことにする。
この R 2 上の線型変換は一次独立な二つの vectors, 特に標準基底と成分で定義した ex, ey の像だけで決まる。 即ち
∀x∈ R 2∃!α∃!β∈ R (x = αex + βey)
であるから, 上記の線型性によって
f(x) = f(αex + βey) = αf(ex) + βf(ey).
勿論, f(ex), f(ey)∈ R 2 でもあるから
f(ex) = aex
+ cey,
f(ey) = bex + dey
となる a, b, c, d∈ R が唯一組定まる (順番が気になるだろうが, 誤りではない, 直ぐあとで分かる)。 逆にこのような a, b, c, d を一組決めると, 線型変換 f が決まる。
今, 上記のように実数の四組 (a, b, c, d) によって線型変換 f を定めたとしよう。 この時これを成分で表すことにする。 標準基底と成分で定めたように ex = (1, 0), ey = (0, 1) であるから, 上記より
f(1, 0) = f(ex) = aex
+ cey = a(1, 0) + c(0, 1) = (a, c),
f(0, 1) = f(ey) = bex + dey
= b(1, 0) + d(0, 1) = (b, d).
従って (x, y) の像は
f(x, y) = f(xex + yey) =
xf(ex) + yf(ey) = x(a, c) +
y(b, d) = (ax, cx) + (by, dy)
= (ax + by, cx + dy).
よって, (x', y') = f(x, y) と置くと (この ' は微分ではない)
x' = ax + by,
y' = cx + dy
を得る。 これを線型変換 f の (標準基底による) 成分表示という。