以下一次変換のうちのいくつかの例を成分表示で表してみよう。
一番簡単な変換は a = 1, b = 0, c = 0, d = 1 という変換である。 即ち
x' = x,
y' = y
である。 これは実際には像と原像が一致している。 この変換を
恒等変換 identity transformation
という。
a = b = c = d = 0 であるような変換, 即ち
x' = 0,
y' = 0
という特殊な変換も亦一次変換の一種である。 普通像全体の集合が一点からなるものを定値写像というが, この変換は一次変換のうち唯一の定値写像である。 というのはもしも, 任意の x について f(x) = a であったとすると線型性から f(2x) = f(x) = 2a でなければならないから, 定値写像であるから 2a = a でなければならず, それは a = 0 を意味している。
この変換は零変換 null transformation という。
点を x 軸に関し対称に変換するものを考える。
この変換は右図に見られるように
(x, y) → (x, -y)
という変換を引き起こしている。
これを標準形で表すと
x' = x,
y' = -y
となっている。
これを x 軸対称変換という。
同様に点を y 軸に関し対称に変換するものを考える。
この変換は右図に見られるように
(x, y) → (-x, y)
という変換を引き起こしている。
これを標準形で表すと
x' = -x,
y' = y
となっている。
これを y 軸対称変換という。
更に点を原点に関し対称に変換するものを考えると, 右図に見られるように
(x , y) → (-x, -y)
というものであるので,
x' = -x,
y' = -y
となる。
これを原点対称変換という。
原点を中心として k (> 0) 倍の拡大をする変換を考える。 この変換は図に見られるように
(x, y) → (kx, ky)
というものなので,
x' = kx,
y' = ky
となる。
これを原点を中心とする相似比 k の相似変換という。
この辺から一寸難しい。
原点中心の角度 θ (一般角で採る) の回転変換を考える。
一次変換の所で示したように, この変換 f は f(ex) と f(ey) だけで定まる。
右図に見られるように
f(ex) = cos θ ex
+ sin θ ey,
f(ey) = -sin θ ex + cos θ ey
であるから,
x' = (cos θ)x - (sin θ)y,
y' = (sin θ)x + (cos θ)y
となっている。
これが原点中心角度 θ の回転変換である。
この変換は右図に見られるように
(x, y) → (y, x)
という変換になるので
x' = y,
y' = x
である。
この変換は右図に見られるように
(x, y) → (-y,- x)
という変換になるので
x' = -y,
y' = -x
である。
平面上の点 P0(x0, y0) の直線 y = mx に関する対称点を P'(x', y') とする。 直線 y = mx は mx - y = 0 と書けるので, その方向ベクトル (の一つ) は (1, m) である。 明らかに
P0P' ⊥ (1, m) ⇔ (x' - x0, y' - y0)・(1, m) = 0.
従って x' - x0 + my' - my0 = 0. 故に
x' + my' = x0 + my0 … (1).
さて又, P0 と P' の中点 ((x' + x0)/2, (y' + y0)/2) は直線 y = mx 上にあるので (y' + y0)/2 = m(x' + x0)/2. 故に
mx' -y' = -mx0 + y0 … (2).
(1) と (2) を連立させると m2 + 1 > 0 なので
x' = ((1 - m2)/(1 + m2))x0 +
(2m/(1 + m2))y0,
y' = (2m/(1 + m2))x0 - ((1 - m2)/(1 + m2))y0.
これを書き改めて
x' = ((1 - m2)/(1 + m2))x + (2m/(1 + m2))y,
y' = (2m/(1 + m2))x - ((1 - m2)/(1 + m2))y.
これが求めるものである。