一次変換の例


以下一次変換のうちのいくつかの例を成分表示で表してみよう。


[1] 恒等変換

一番簡単な変換は a = 1, b = 0, c = 0, d = 1 という変換である。 即ち

x' = x,
y' = y

である。 これは実際には原像が一致している。 この変換を

恒等変換 identity transformation

という。


[2] 零変換

a = b = c = d = 0 であるような変換, 即ち

x' = 0,
y' = 0

という特殊な変換も亦一次変換の一種である。 普通像全体の集合が一点からなるものを定値写像というが, この変換は一次変換のうち唯一の定値写像である。 というのはもしも, 任意の x について f(x) = a であったとすると線型性から f(2x) = f(x) = 2a でなければならないから, 定値写像であるから 2a = a でなければならず, それは a = 0 を意味している。

この変換は零変換 null transformation という。


[3] x 軸対称変換

点を x 軸に関し対称に変換するものを考える。

この変換は右図に見られるように

(x, y) → (x, -y)

という変換を引き起こしている。

これを標準形で表すと

x' = x,
y' = -y

となっている。

これを x 軸対称変換という。


[4] y 軸対称変換

同様に点を y 軸に関し対称に変換するものを考える。

この変換は右図に見られるように

(x, y) → (-x, y)

という変換を引き起こしている。

これを標準形で表すと

x' = -x,
y' = y

となっている。

これを y 軸対称変換という。


[5] 原点対称変換

更に点を原点に関し対称に変換するものを考えると, 右図に見られるように

(x , y) → (-x, -y)

というものであるので,

x' = -x,
y' = -y

となる。

これを原点対称変換という。


[6] 相似変換

原点を中心として k (> 0) 倍の拡大をする変換を考える。 この変換は図に見られるように

(x, y) → (kx, ky)

というものなので,

x' = kx,
y' = ky

となる。

これを原点を中心とする相似比 k の相似変換という。


[7] 回転変換

この辺から一寸難しい。

原点中心の角度 θ (一般角で採る) の回転変換を考える。

一次変換の所で示したように, この変換 f は f(ex) と f(ey) だけで定まる。

右図に見られるように

f(ex) = cos θ ex + sin θ ey,
f(ey) = -sin θ ex + cos θ ey

であるから,

x' = (cos θ)x - (sin θ)y,
y' = (sin θ)x + (cos θ)y

となっている。

これが原点中心角度 θ の回転変換である。


[8] 直線 y = x に関する対称変換

この変換は右図に見られるように

(x, y) → (y, x)

という変換になるので

x' = y,
y' = x

である。


[9] 直線 y = -x に関する対称変換

この変換は右図に見られるように

(x, y) → (-y,- x)

という変換になるので

x' = -y,
y' = -x

である。


[10] 直線 y = mx に関する対称変換

平面上の点 P0(x0, y0) の直線 y = mx に関する対称点を P'(x', y') とする。 直線 y = mx は mx - y = 0 と書けるので, その方向ベクトル (の一つ) は (1, m) である。 明らかに

P0P' ⊥ (1, m) ⇔ (x' - x0, y' - y0)・(1, m) = 0.

従って x' - x0 + my' - my0 = 0. 故に

x' + my' = x0 + my0 … (1).

さて又, P0 と P' の中点 ((x' + x0)/2, (y' + y0)/2) は直線 y = mx 上にあるので (y' + y0)/2 = m(x' + x0)/2. 故に

mx' -y' = -mx0 + y0 … (2).

(1) と (2) を連立させると m2 + 1 > 0 なので

x' = ((1 - m2)/(1 + m2))x0 + (2m/(1 + m2))y0,
y' = (2m/(1 + m2))x0 - ((1 - m2)/(1 + m2))y0.

これを書き改めて

x' = ((1 - m2)/(1 + m2))x + (2m/(1 + m2))y,
y' = (2m/(1 + m2))x - ((1 - m2)/(1 + m2))y.

これが求めるものである。


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