一次変換 f の成分表示の式
x' = ax + by,
y' = cx + dy
の右辺の, x と y の係数をその位置に書き, 括弧で括ったもの
を, 一次変換 f を表す行列 matrix という。 上記の成分表示の式の係数行列 coefficient matrix ということもある。 この行列の (a b) を第一行, (c d) を第二行という。 両方合わせて行 raws という。 又 を第一列, を第二列, 合わせて列 columns という。 第 j 行, 第 k 列の所の値 (又は文字) をこの行列の第 (j, k) 成分 element という。 即ち上記の場合第 (1, 1) 成分は a, 第 (1, 2) 成分は b, 第 (2, 1) 成分は c, 第 (2, 2) 成分は d である。
行列を A の様に普通 Latin alphabet の大文字で表し, その第 (j, k) 成分を ajk と書き,
A = (ajk)
と書くことも良く行われる (index notation と呼ばれる)。
一次変換の例で述べた各々の一次変換を表す行列をそれぞれここに書いてみよう。
恒等変換を表す行列は である。 これは二次の単位行列 unit matrix, identity と呼ばれる (屡々 E とも書かれる)。
零変換を表す行列は である。 これは零行列と呼ばれる。
x 軸対称変換を表す行列は であるが, これには名前は特に付いていない。
y 軸対称変換を表す行列は である。
原点対称変換を表す行列は である。 これは後に述べる理由によって -I2 = -E と書かれる。
原点中心の相似比 k (> 0) の相似変換を表す行列は である。 これも後に述べる理由によって kI2 = kE と書かれる。
原点中心の角度 θ の回転変換を表す行列は である。
直線 y = x に関する対称変換を表す行列は であり, 直線 y = -x に関する対称変換は である。 最後に直線 y = mx に関する対称変換は である。