基本形 III (三項間線型) & III'


III: pan+2 + qan+1 + ran = 0; p, q, r: 定数, p ≠ 0.

特性方程式 (proper equation, 固有方程式 Eigengleichung)
pt2 + qt + r = 0
の二解 (固有値 eigenvalue) を α, β と置くと,
an+2 - αan+1 = β(an+1 - α an).

III': pan+2 + qan+1 + ran = s; p, q, r: 定数, p ≠ 0, s ≠ 0.

i) p + q + r ≠ 0 ⇒ k = s/(p + q + r) として, an - k を作る → type III.
ii) p + q + r = 0
 ⇒ (1) III のようにして an+2 - α an+1 = β( an+1 - α an) + s を作り, I, II, II' の何れかに帰結。
   (2) an+1 - an 又は an+1 - (r/p)an を作り, II, II' に帰結。


解説

III. 等比数列に還元したいので, 今仮に

an+2 - αan+1 = β(an+1 - αan)

と書けたとしよう。 これを展開して全て左辺に移項して纏めれば

an+2 - (α + β)an+1 + αβan = 0.

一方もとの漸化式から

an+2 + (q/p)an+1 + (r/p)an = 0.

辺々比較して α + β = -q/p, αβ = r/p. 従って二次方程式の解と係数の関係から, α, β は t2 + (q/p)t + r/p = 0 即ち pt2 + qt + r = 0 の解。 逆は明らか。

この方程式が特性方程式と呼ばれるのは線型代数学の用語なのであるが, 細かいことはここでは省略する。

又, これは仮に適当な初期条件のもとに an = atn (a ≠ 0, t ≠ 0) という形 (即ち等比数列の形) の解があったと仮定して, それをもとの漸化式に代入して得られる t に関する方程式

p・atn+2 + q・atn+1 + r・atn = 0

pt2 + qt + r = 0

という考えからも導かれる。

III': i) I' と同様に

p(an+2 - k) + q(an+1 - k) + r(an - k)
= pan+2 + q an+1 + ran - k(p + q + r) = 0

と書けたとしよう。 もとの式 pan+2 + qan+1 + ran = s と比較すると k(p + q + r) = s だから k = s/(p + q + r).

この k は I で述べた不動点方程式 pt + qt + rt = s の解である。

ii) (2) p + q + r = 0 ⇔ q = -(p + r). これを元式に代入して

pan+2 - (p + r)an+1 + ran
= p(an+2 - an+1) - r(an+1 - an) = s.

同様にして

pan+2 - pan+1 - ran+1 + ran
= (pan+2 - ran+1) - (pan+1 - ran) = s.


例題

(1) a1 = 1, a2 = 2; an+2 - an+1 - 6an = 0.

(2) a1 = 1, a2 = 4; an+2 - 4an+1 + 4an = 0.


(1) 特性方程式 t2 - t - 6 = (t - 3)(t + 2) = 0 より固有値 t = 3, -2 (本当は解説のところに書いたようにして α, β を求めた方が答案としては良い).

i) an+2 - 3an+1 = -2(an+1 - 3an).

これは初項 (a2 - 3 a1), 公比 (-2) の等比数列だから (以下この部分省略)

∴an+1 - 3 an = (-2)n-1(a2 - 3 a1) = (-1)・(-2)n-1.

ii) an+2 + 2an+1 =3( an+1 + 2an).

∴ an+1 + 2an = 3n-1(a2 + 2a1) = 4・3n-1.

ここで ii) -i) より

5an = 4・3n-1 + (-2)n-1.

∴an = (4・3n-1 + (-2)n-1)/5.

注: i) から type II' に持ち込む方法もあるが, 固有値が相異なる二つである時にはこちらの方が楽。

(2) 固有値は t = 2 (重解).

an+2 - 2an+1 = 2(an+1 - 2an).

∴an+1 - 2an = (a2 - 2a1)・2n-1 = 2ntype II'.

∴an+1/2n+1 - an/2n = 1/2 … type II' (又は等差数列)

∴an/2n = a1/21 + Σk=1n-1 (1/2) = 1/2 + (n - 1)/2 = n/2.

∴an = n・2n-1.

これは n = 1, 2 の場合も含んでいる。


練習

(1) a1 = 3, a2 = 1; 3an+2 - 2an+1 - an = 0.

(2) a1 = 1, a2 = 2; an+2 - 2an+1 + an = 0.


(1) an = (3/2)(1 + (-1/3)n-1)/5.

(2) an = n.


III' の例題は余り入試問題等ででないので掲げないが, 次のもっと難しい問題を発見したので, ここに載せておく:

[1989 東北大, 文系]

a1 = 2, a2 = 0; an+2 - 2an+1 + an = 2n - 8.


.これは特性方程式が重解で固有値が 1 の場合だから

(an+2 - an+1) - (an+1 - an) = 2n - 8.

より

an+1 - an = (a2 - a1) + Σk=1n-1 (2k - 8)
= -2 + 2×n(n-1)/2 - 8(n - 1)
= -2 + n2 - n - 8n + 8
= n2 - 9n + 6.

これは n = 1 の場合も含む。

従って

an = a1 + Σk=1n-1 (k2 - 9k + 6)
= 2 + (n - 1)n(2n - 1)/6 - 9n(n - 1)/2 + 6(n - 1)
= (1/6)(2n3 - 3n2 + n - 27n2 + 27n + 36n - 36 + 12)
= (1/6)(2n3 - 30n2 + 64n - 24)
= (1/3)(n3 - 15n2 + 32n - 12)
= (n - 2)(n2 - 13n + 6)/3.

これは n = 1 の場合も含む

[別解 1]

bn = an + αn3 + βn2 + γn + δ と置く。 従って an = bn - (αn3 + βn2 + γn + δ) であるが, これをもとの式 an+2 - 2an+1 + an = 2n - 8 に代入して bn+2 - 2bn+1 + bn = 0 となるようにすると (途中経過が長いので省略) α = -1/3, β = 5 だが, γ と δ は不定。 そこで取り敢えず

bn = an - (1/3)n3 + 5n2

と置く。

b1 = a1 - 1/3 + 5 = 20/3,
b2 = a2 - (1/3)・23 + 5・22 = 52/3.

で bn+2 - bn+1 = bn+1 - bn = … = b2 - b1 = 32/3.

だから bn = b1 + (32/3)(n - 1) = (32/3)n - 4.

∴an = bn + (1/3)n3 - 5n2 = (1/3)n3 - 5n2 + (32/3)n - 4.

[別解 2]

type I' ii) でのようにして番号をずらして差を取ると

(an+3 - an+2) - 2(an+2 - an+1) + (an+1 - an) = 2.

bn = an+1 - an と置く。 a3 = 2a2 - a1 + 2 - 8 = -8 だから b2 = 8, b1 = -2. さて上記の式から bn+2 - 2bn+1 + bn = 2. 従って

(bn+2 - bn+1) - (bn+1 - bn) = 2.

∴bn+1 - bn = b2 - b1 + 2(n - 1) = 2n - 8.

∴bn = b1 + Σk=1n-1 (2k - 8) = n2 - 9n + 6.

これは n = 1 の場合をも含んでいる。

∴an = a1 + Σk=1n-1 (k2 - 9k + 6) (以下略).


参考: (ここは微分方程式を知らない人が読んでも分からない)

この type の漸化式は定数係数の二階齊次 (せいじ) 線型微分方程式, 二階非齊次 (せいじ) 線型微分方程式 (最近は 「整次」 という字を書いたり 「同次」 といったりするようである) と関係がある。

というのは py'' + qy' + ry = 0 の一般解は, 特性方程式 pt2 + qt + r = 0 の二解 (固有値 eigenvalue) を α, β と置くと, 二つの任意の定数 C1, C2 を用いて y = C1eαx + C2eβx と書けるからである。 これを離散変量に持ち込んで差分方程式にしたものが, 上記のものであり, C1, C2 を初期条件によって求めることが出来るというわけである。

齊次 (せいじ) の場合は要するに py'' + qy' + ry = s の特殊解を求めるのに対応している。 即ち, 漸化式 pan+2 + qan+1 + ran = s の特殊解のうち特に定数列であるものを求めると, それが an = s/(p + q + r) になるということを利用しているのである。

上記の東北大の問題は更に難しく, [別解 1] では特殊解の一つに an = (1/3)n3 + 5n2 が 採れるということを用いているのである。


次へ
漸化式の目次