Ceva の定理


重心以外の内点 (つまり頂点と辺を除いた内部の点) と各頂点を結んだ線に対して成立するのが次の定理である。

定理 [Ceva (チェバ)]

△ABC の一つの内点を通り, 各頂点を通る直線が, その対辺と交わる点を P, Q, R とするとき

証明: 必要ならば図形全体を平行移動させて C(0), A(a), B(b) とすることが出来る。 ここで t = PC/BC, s = QC/AC と置くと P(tb), Q(sa) である。 又 D(d) = (A∪P)∩(B∪Q) とすると, ベクトル方程式により

d = (1 - α)a + αtb = (1 - β)b + βsa

と置くことが出来る。 故に

(1 - α - βs)a + (αt - 1 + β)b = 0.

明らかに ab は一次独立だから

1 - α - βs = 0,
αt - 1 + β = 0.

即ち

α + βs = 1,
αt + β = 1

これを解いて, α = (1 - s)/(1 - st), β = (1 - t)/(1 - st). ここで s, t の置き方から特に 0 < s < 1, 0 < t < 1 であり, 特に 0 < st < 1 である。

さて, s, t の値を代入して d = (1 - (1 - s)/(1 - st))a + (t(1 - s)/(1 - st))b 即ち

d = (s(1 - t)/(1 - st))a + (t(1 - s)/(1 - st))b

を得る。

ここで R(r) と置くと, 再びベクトル方程式により

r = (1 - γ)a + γb = δd

と置くことが出来る (この時AR : RB = γ : (1 - γ) である。 このことはあとでもう少しきちんと述べる)。 即ち

(1 - γ)a + γb = δ(s(1 - t)/(1 - st))a + δ(t(1 - s)/(1 - st))b

a, b が一次独立だから

1 - γ = δ(s(1 - t)/(1 - st)),
γ = δ(t(1 - s)/(1 - st)).

s(1 - t) > 0, t(1 - s) > 0 より辺々加えて解くと

δ = (1 - st)/(s + t - 2st),
γ = t(1 - s)/(s + t - 2st).

よって

(BP/PC)(CQ/QA)(AR/RB)
= ((1 - t)/t)(s/(1 - s))(γ/(1 - γ)
= ((1 - t)/t)(s/(1 - s))(t(1 - s)/(s + t - 2st - t+ st))
= s(1 - t)/(s - st) = 1□

元来この定理は次の Menelaus の定理を用いて初等的に証明されたものである。 尚, この定理と次の Menelaus の定理とは, 符号を考えて少し考え直せば逆も成立することが知られている (実はベクトルの証明は符号をつけたあと証明を逆に辿ればよい)。
Ceva の定理, Menelaus の定理の逆については

小平邦彦: 幾何の面白さ, 岩波

を見るのが良いと思われる。 が現在も入手可能かどうかは不明である。


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