平行と一次独立


a ≠ 0 について, a生成する直線Ra = {ka|k ∈R} で表す。尚 a = 0 の時も同じ記号で表すが R0 = {0} である。 さて

a || bbRaa = 0 ⇔ ∃k∈R(b = ka)∨a = 0

と定義し, ab平行である parallel という。

意味は上の図から明らかであろう。

尚, 例えば b = 0 とすると 0 ∈Ra は 0 = 0a より明らかであるから, a がどんな vector であっても 0 || a である (0 の向きを考えないとする立場では, この式は成り立たない)。 又明らかに

[反射法則 reflexive law] a || a,
[対称法則 symmetric law] a || bb || a,
[推移法則 transitive law] b ≠ 0 ∧ a || b b || ca || c.

(0 の向きを考えないとする立場では, 最後の推移法則において b ≠ 0 という仮定は不必要である。)

[定義]

n 個の vectors ai, i = 1, 2, ..., n と scalars ki, i = 1, 2, ..., n に対し

k1a1 + k2a2 + … + knan

を vectors a1, ..., an一次結合, 又は線型結合 linear combination という。

[定義]

vectors a1, ..., an に対し, scalars の少なくとも一つは 0 でないような或る一次結合の組合せがあって

k1a1 + k2a2 + … + knan = 0

が成り立つとき, vectors a1, ..., an一次従属, 又は線型従属 linearly dependent といい, どのような一次結合を作っても scalars の全てが 0 でない限り上記のように = 0 にはならないとき一次独立, 又は線型独立 linearly independent という。

さて, 一次従属, 一次独立の意味を考えてみよう。

簡単の為に n = 3 とする。 即ち

k1a1 + k2a2 + k3a3 = 0

とする。

先ず一つだけ 0 でない。 例えば k1 ≠ 0, k2 = k3 = 0 としよう。 即ち k1a1 = 0. これは唯単に a1 = 0 ということを言っているに過ぎない。 つまりこのことから分かるように, a1, a2, a3 が一次独立とすれば 0 (zero vector) はその中には含まれないということである。

次に ai の何れも 0 ではないとしよう。

今度は一つだけ 0 でないということはあり得ないので, 二つだけ 0 でない, 例えば k1 ≠ 0, k2 ≠ 0, k3 = 0 としよう。 この時は k1a1 + k2a2 = 0, 即ち例えば a2 = (-k1/k2)a1 を意味している。 これは a2 || a1 を意味している。 だから a1, a2, a3 が一次独立とすれば, その中には平行な vectors は含まれていないということである。

さて, ここからあとは平面上の vectors の話に限定しよう。

今, a1, a2 は一次独立として, a3 ≠ 0 としよう。 すぐ上で見たように a1, a2 が一次独立ということは ¬(a1 || a2) (平行でない) を意味していて, 平面上の vectors を考えているのだから, a3 がどのような vector であろうが ∃k1,k2(a3 = k1a1 + k2a2 となっている。 即ち k1a1 + k2a2 - a3 = 0 であるから, k3 = -1 として一次従属になる。

以上のことから次のことが分かった。

[定理]

平面上の vectors について

a1, a2 が一次独立 ⇔ ¬(a1 || a2)

であり, 三つ以上の vectors が一次独立となることはない。

[定理]

平面上の vectors の集合を V2 と書くと,

a1,a2(V2 = Ra1Å Ra2).

ここで記号 "Å" (○ の中に +) は

Ra1Ra2 = 0 ∧ V2 = Ra1 + Ra2 = {xa1 + ya2| x, y ∈ R}

を意味している (Ra1Ra2直和 direct sum という)。

実際, a1, a2 を一次独立に採ればよい。 この場合 {a1, a2} を V2 の基底 base, basis という。


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