行列式と面積


以前に 「積分 1」 の 「面積」 のところで述べたように, 面積とは x 軸方向に 1, y 軸方向に 1 の正方形が幾つ入るかということが基本になっているのだった。 今, 或る図形の面積が S だったとす同一直線上に映されるということから が張る正方形, つまり D: se1 + te2,  の表す領域の面積が S 個分であるということを意味していると考えて良い。

今この図形を P = (pi) によって変換したとしよう。 この時, 面積は何倍になるであろうか ? その倍率を求めれば良い。

D を P で変換すると
P(se1 + te2) = sp1 + tp2,
0 ≦ s ≦ 1, 0 ≦ t ≦ 1
であるから, D の面積 A は
A = |p1||p2| sin ∠(p1, p2)
= |p1||p2|√sin2∠(p1, p2)
=  |p1||p2|√(1 - cos2∠(p1, p2))
= √(|p1|2|p2|2 - (|p1||p2|cos ∠(p1, p2))2)
= √(|p1|2|p2|2 - (p1p2)2).

さて一方 pk = p1ke1 + p2ke2 と書けるから
|p1|2|p2|2 - (p1p2)2
= (p112 + p212)(p122 + p222) - (p11p12 + p21p22)2.
= p112p122 + p112p222 + p212p122 + p212p222 - (p112p122 + 2p11p12p21p22 + p212p222)
= p112p222 - 2p11p12p21p22 + p212p122
= (p11p22 - p21p12)2
= det(P)2.

従って A = √(det(P)2) = |det(P)| (外側の縦棒は絶対値).よって次のことが分かった。

定理

行列 P によって面積 S の図形を変換すると, その面積は |det(P)| 倍になる。

このことから直ちに正則でない行列 P で図形を変換すると面積は 0 に成ってしまうことが分かる。 それは P(ei) が同一直線上に移されるということから (一本の直線上に潰されてしまうので) 明らかであろう。


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