積分 1


小学校以来, 足し算を学ぶとその逆の引き算を学び, 掛け算を学ぶとその逆の割り算を学び, 展開を学ぶとその逆の因数分解を学び ... という具合に, 算数・数学というのは常にあることを学ぶと, 必ずその逆を学んでいるような気はしないだろうか ?

端的にいえば, 積分とは微分の逆である --- 近年の考え方では, 寧ろそれは逆で, 積分が最初にあって, その逆が微分であるようだが。

数学でこのように常に 「逆」 が対になって現れるのを思うとき, 私は白居易の有名な 「長恨歌」 の末尾近くの次の詩句を思い出す:

在天願作比翼鳥 在地願為連理枝

読みは 「天にありては願わくは比翼の鳥となり, 地にありては願わくは連理の枝とならんと」 であるが, 比翼の鳥とは, 雌雄が各々目が一つ, 翼も片翼だけで, 常に二羽がいっしょにならなければ飛べないという想像上の鳥, 連理の枝とは, それぞれ別な幹から出た二本の枝が一つに連なるものであるという。

丁度そのように, 微分と積分はいつも一緒にいる典型的なものだと思ったりするのである。

さて, 積分は文部科学省の標準の課程では, まさしくその 「微分の逆」 として導入されるが, これがあまりにも評判が悪い --- 生徒の間でも, 数学者の間でも (教員の間ではどうか分からない)。

ここでは安易に流れるのを避け, 速度がわかっているときの物体の運動から, 積分の概念に迫ってみたいと思う。



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