スカラー行列と同型


R̃ で 集合 を表すことにする。 すぐ分かるように R̃⊂M2(R) で, M2(R) はであるから, R̃ の元同士には M2(R) での加法と乗法とを考えることが出来る (勿論結果が R̃ に入るかどうかは分からないが)。

明らかに I2 = 1・I2, 0 = 0・I2 R̃ であり, 又

kI2 + mI2 = (k + m)I2 R̃,
(kI2)・(mI2) = (km)I2 R̃

であるから R̃ は +, ・ で閉じている。 又 kI2 + mI2 = mI2 + kI2 で, kI2 + 0 = 0 + kI2 = kI2 であるから R̃ は環, 特に M2(R) の部分環 subring である。 更に (kI2)・(mI2) = (mI2)・(kI2) だから可換環であり, k ≠ 0 ならば だから R̃ は可換体である。

よって R̃ をスカラー行列の作る体という。

実は R̃R : kI2 → k は一対一の対応で, 上記によって +, ・ はそのまま R̃R で対応がついていることが分かる。 このことは (見かけはともかく) +, ・ という演算についてみれば R̃R は全く同じであるということを意味している。 このことを R̃R は体として同型 isomorphic であるという。 このことを記号で と書く。 更に上記の対応 R̃R : kI2 → k のことを R̃ から R への体としての同型写像 isomorphism という。

数学に於ては多くの場合, 同型なものを区別しないので, 以下 R̃ も特に区別せずに R と書く。


次へ
複素数の目次
平面上の一次変換と行列の目次