さて, (sin x)' = cos x, (cos x)' = -sin x ですから, 順番から言うと (tan x)' を考えることになるわけですが, tan x = (sin x)/(cos x) だから, 割り算の微分が分からなければいけません。 しかし良く考えると tan x = (sin x)×(1/(cos x)) だから, 先ず掛け算の微分を先に考えた方がいいわけなのです。
そこで積の微分を考えましょう。
積の微分の公式は, 一寸難しいのですが, 次のように考えると当然です。
y = y1y2 としましょう。 x を少しだけ動かすと, y が y + dy という風に少しだけ変化します (dy は微小量)。 y1 も同様に y1 + dy1 と変化し, y2 も y2 + dy2 と変化します。 即ち
y + dy =(y1 + dy1)(y2 + dy2)
= y1y2 + (dy1)y2 + y1(dy2)
+ (dy1)(dy2).
y = y1y2 でしたから, 辺々から相殺すると
dy = (dy1)y2 + y1(dy2) + (dy1)(dy2).
これを dx (これも微小量) で割ると
dy/dx =(dy1/dx)y2 + y1(dy2/dx) + (dy1)(dy2)/dx.
但し最後の項は, 微小量の自乗を微小量で割っているので, その他の項よりも微小の度合いが高いから, 無視して
dy/dx =(dy1/dx)y2 + y1(dy2/dx).
これが積の微分公式である。 といっても分からないだろうな (笑)
今まで y の微分は y' と書いてきました。 これは Lagrange (ラグランジュ, Joseph Louis, 25th January, 1736 -- 10th April, 1813) の作った記号だそうです。 これに対し Leibniz (ライプニッツ, Gottfried Wilhelm Freiherr von, 1st July, 1646 -- 4th November, 1716) が作った記号 dy/dx があります。 上の微分は, この Leibniz の記号として見て下さい。 この他にも Newton は . を上に打って微分の記号としましたし, Cuachy (コーシー) は Dy で微分の記号としました。
Leibniz はスケール変換で述べたような 「y の差 (正式には増分 difference)」 を Δy, 「x の差」 をΔx とするときの, 増分の比の極限 limΔx → 0 Δy/Δx を微分と定義し, その意味で dy/dx と書いたのです。
さて, 普通に積の微分を計算するのは次のようにします。
即ち (f(x)g(x))' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x).
そういうわけで, 積の微分公式のことを Leibniz rule (ライプニッツ則) ということがあります。