微分商


導函数を表す記号 dy/dx をどうやって導入したのか忘れたが, あんまり意味について述べていなかった気がするので, ここで述べておく。

導函数の定義は

であったわけだが, これを dy/dx とも書いたのであった。 これを lim を使わないで書き表すと Landau の記号を用いれば

f'(x) = (f(x + h) - f(x))/h - o(h)

である。 さて h = (x + h) - x は x の差 difference だから, 習慣的に Δx と書く。 同様に f(x + h) - f(x) = f(x + Δx) - f(x) は y の差だから Δy (= Δf(x)) と書く (ギリシャ文字 Δ は delta の大文字で, ギリシャでは D として用いる)。 従って上記の式は f'(x) = Δy/Δx - o(Δx) と書かれるわけである。 書き直すと Δy = f'(x)Δx + o(Δx)Δx という形をしている。 Δx → 0 の極限を考えると, 左辺も右辺も 0 になってしまうが, ここは超実数で考えて, 無限小が残ると考える。 o(Δx) は Δx よりも速く 0 になってしまう高位の無限小であるので, 無限小同士の等式としては 0 になると考え, 残った無限小同士を Δy→dy, Δx→dx と考える。 これら dy, dx を各々 y の微分, x の微分と呼ぶ。 すると dy = f'(x)dx となる (これはこの site の微分形式の定義と同じである)。 従って f'(x) = dy/dx となって, 微分同士の商となるので f'(x) の事を微分商 Differentialquotient, differential quotient と呼んだりする。

定積分のところで ∫abf(x)dx と書いた dx は x 軸方向の無限小成分であり, f(x) に無限小 dx を掛けた長方形の面積を, a から b まで無限に足し合わせたという意味であることは既に述べた。


この記号法を用いると, もう少しちゃんと, 合成函数の微分について述べることが出来る。

即ち z = g(y), y = f(x) とすると, Δz = Δg(y) = g'(y)Δy + o(Δy)Δy, Δy = f'(x)Δx + o(Δx)Δx だから, 代入して

Δz = g'(y)Δy + o(Δy)Δy = g'(f(x))(f'(x)Δx + o(Δx)Δx) + o(Δy)Δy
= g'(f(x))f'(x)Δx + g'(f(x))o(Δx)Δx + o(f'(x)Δx + o(Δx)Δx)(f'(x)Δx + o(Δx)Δx)Δx

だから Δx→0 に移って dz = g'(f(x))f'(x)dx 即ち dz/dx = g'((f(x))f'(x) = g'(y)f'(x) = (dz/dy)(dy/dx) である。


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