これまで密かに黙って使っていた性質である, 函数が連続であるということをちゃんと定義しよう。
函数が連続であるというのは要するに graph が繋がっているということである。 が, graph が繋がっているとはどういうことなのか, 更に, graph が描けないような場合 (例えば x ≠ 0 ⇒ f(x) = (sin x)/x, x = 0 ⇒ f(x) = 1 のような函数) はどうやって連続かそうでないかを見ればよいのか, ということが問題になるのである。
Graph が繋がっているということが述べ難いので, 繋がっていることを調べる代わりに, 逆に繋がっていないことはどういうことかを見てみよう。
簡単の為に, 他の点では graph が繋がっているが, x = a のところで graph が繋がっていないような函数を考えよう (上の図)。 要するに x = a で繋がっていないとは, x = a で 「函数の値に飛びがある」 ということを意味していると思われる (勿論 x = a の値自体が飛んでいるということも考えられる)。 もう少し感覚的にいうと, x = a の時の値 f(a) と, x = a の 「隣の点」 の値が違っているということだ。 しかし, 実数には (というか有理数でも既に) 「隣の点」 というのは存在しない。 無理に 「隣の点」 を考えれば, それは無限小だけ違っている点 x = a ± 0 である。 つまり, graph が繋がっていないとは f(a) ≠ f(a ± 0) ということであろう。 逆にいうと, 繋がっているとは 「隣の点」 との値が同じ, 即ち f(a) = f(a ± 0) ということであろう。 さて, 「無限小数 a ± 0 を代入する」 ということの標準的解釈は何かというと x → a の極限を考えるということだから, つまりは次のようなことが graph が繋がっている, 即ち函数が x = a で連続であるということの定義になるであろう。
x → a の時 f(x) → f(a) となるとき (つまり f(a) = limx→a f(x) の時) 函数 f(x) は一点 x = a に於いて連続 continuous であるという。
極限の記号 lim を用いずに書くと
∀ε > 0 ∃δ > 0 (|x - a| < δ ⇒ |f(x) - f(a)| < ε).
又 f(a) = limx→a+0 f(x) の時 f(x) は x = a で右連続 right continuous, continuous on the right といい, f(a) = limx→a-0 f(x) の時 f(x) は x = a で左連続 left continuous, continuous on the left という。 多くの場合上記のように f(a + 0) = limx→a+0 f(x), f(a - 0) = limx→a-0 f(x) と略記するので, 右連続の定義は f(a) = f(a + 0) のように書かれる。
函数 f(x) が, ある区間 (a, b) の各点で連続なときには, その函数はその区間で連続であるといわれる。 更に, x = a で右連続, x = b で左連続であるとき, f(x) は閉区間 [a, b] で連続であるといわれる。このような函数はその区間で C0 級の函数であるという (Cn 級の C は continuous の略で, n は f(n) まで連続であることを意味している)。
逆に, もしも f(x) が一点 a で連続でないとき, つまり f(a) ≠ limx→a f(x) の時, f(x) は一点 x = a で不連続 discontinuous である, x = a は函数 f(x) の不連続点であるという。 函数 f(x) はある区間内に少なくとも一つ不連続点を持つとき, その区間で不連続であるといわれる。
一点 x = a が函数 f(x) の不連続点であるとしよう。 もしも片側極限値 f(a ± 0) の両方共が存在するけれども f(a - 0) = f(a) = f(a + 0) が成り立たないような場合, この点 x = a は第一種の不連続点といわれる。 これに対し片側極限値 f(a ± 0) の少なくとも一方が存在しないとき, この点 x = a は第二種の不連続点であるといわれる。
殆ど明らかだが, f(x), g(x) が x = a で連続ならば, f(x) ± g(x), f(x)g(x) も x = a で連続であり, 更に g(a) ≠ 0 であるとすれば f(x)/g(x) も x = a で連続である。 又, f(x) が x = a で連続であり, g(x) が x = f(a) で連続ならば, 合成函数 g(f(x)) も x = a で連続である。 従って直ちに f(x) が x = a で連続ならば |f(x)| も連続だし, f(x), g(x) が x = a で連続ならば max(f(x), g(x)) = (f(x) + g(x) + |f(x) - g(x)|)/2 も連続, 同様に min(f(x), g(x)) も連続。
例:
(1) 函数 f(x) = |x| は x = 0 で連続であることを証明せよ。
(2) 全ての実数 x, y に関して函数 f(x) は f(x + y) = f(x) + f(y) + 2xy を満たすとする。このとき
(a) f(0) を求めよ。
(b) x = 0 で f(x) が連続であるとき, f(x) は全ての点 x = a で連続であることを証明せよ。
(3) x ≧ 0 で定義される, 次の条件を満たす連続函数 f(x) を求めよ。
f(0) = 0, 0 ≦ x < 2 ⇒ f'(x) = 1, 2 ≦ x < 4 ⇒ f'(x) = 0, x > 4 ⇒ f'(x) = -2.
(4) a を 0 でない定数とする。 又 f(x) = limn→∞ (x2n+1 + (a - 1)xn
- 1)/(x2n - axn - 1) とする。
(a) f(x) を求めよ。
(b) x ≧ 0 で f(x) が連続となるように a の値を定めよ。
解答:
(1) x ≧ 0 ⇒ f(x) = x, x < 0 ⇒ f(x) = -x であるから
f(+0) = |+0| = 0, f(-0) = |-0| = -(-0) = 0. f(0) = 0 だから定義から x = 0 で連続。
(2) (a) x = y = 0 と置くと (これが常套手段)
f(0 + 0) = f(0) + f(0) + 0 即ち f(0) = 2f(0). 従って f(0) = 0.
(b) x = a, y = h と置くと
limx→a f(x) = limh→0 f(a + h) = limh→0 (f(a) +
f(h) + 2ah) = f(a) + f(0).
従って, x = 0 で f(x) が連続ならば f(0) = 0 であるから, 定義から x = a でも連続。
ところでこの函数はどういう函数かというと, もしも, 一点 x = 0 で微分可能ならば, f'(x) = limh→0 (f(x + h) - f(x))/h = limh→0 (f(x) - (f(x) + f(h) + 2xh))/h = limh→0 (-f(h)/h) + 2x = f'(0) + 2x だから f(x) = x2 + f'(0)x というものがその一つになる。 x = 0 で微分可能でなかったらどうなるか ? それはとても難しい --- 少なくとも筆者には分からない (^_^;
(3) 積分すると
0 < x < 2 ⇒ f(x) = x + C1,
2 < x < 4 ⇒ f(x) = C2,
x > 4 ⇒ f(x) = -2x + C3,
(C1, C2, C3 は積分定数)。 先ず f(0) = 0 だから C1
= 0. 次に f(2 - 0) = limx→2-0 f(x) = limx→2-0 x = 2, f(2 +
0) = limx→2+0 f(x) = limx→2+0 C2 = C2.
連続だから f(2) = C2 = 2. 更に f(4 - 0) = limx→4-0 f(x) = limx→4-0
2 = 2, f(4 + 0) = limx→4+0 f(x) = limx→4+0 (-2x + C3)
= -8 + C3. 連続だから -8 + C3 = 2. 即ち C3 = 10. 以上より
(4) (a) |x| > 1 の時 f(x) = limn→∞ (x + (a - 1)/xn - 1/x2n)/(1
- a/xn - 1/x2n) = x,
|x| < 1 の時明らかに f(x) = 1
x = 1 の時 f(x) = (1 + (a - 1) - 1)/(1 - a - 1) = (a - 1)/(-a) = -(a - 1)/a,
x = -1 の時は f(x) = limn→∞ (-2 + (a - 1)(-1)n)/((-1)na)
で, これは振動する。 従って x = -1 では f(x) は存在しない。
(b) f(1 - 0) = 1, f(1 + 0) = 1 であるから, f(1) = -(a - 1)/a = 1 であればよい。
1 - a = a だから a = 1/2.
練習:
(1) 函数 f(x) = |x - 1| は x = 1 に於て連続であることを証明せよ。
(2) 函数 f(x) = √x は x = 0 に於て右連続であることを証明せよ。
(3) 連続函数 f(x) が次の条件を満たすときに f(2) の値を求めよ。
f(-2) = 17, |x| > 1 ⇒ f'(x) = 4x3, |x| < 1 ⇒ f'(x) = 3x2
- 1.
(4) 全ての実数 x, y に大して函数 f(x) は f(x + y) = f(x) - f(y) - xy を満たす。
(a) f(0) を求めよ。
(b) x = 0 で f(x) が連続ならば, f(x) は全ての点で連続であることを示せ。
(5) 次の極限によって定められる函数 f(x) 及びその不連続点を求めよ。
f(x) = limn→∞ (xn + 2x + 1)/(xn-1 + 1)
(6) 次の函数の連続, 不連続について調べ, garph を描け。
f(x) = limn→∞ x2n/(1 + x2n).
略解:
(1)(2) 省略, (3) f(2) = 17 (x = ±1 の両方で連続になっていることを確認することに注意せよ), (4) (a) f(0) = 0, (b) 省略, (5) |x| > 1 ⇒ f(x) = x, f(1) = 2, |x| < 1 ⇒ f(x) = 2x + 1. x = ±1 で不連続 (x = -1 では関数値が存在しない。 x = 1 では f(1 + 0) = 1, f(1 - 0) = 3, f(1) =2 なので不連続), (6) |x| > 1 ⇒ f(x) = 1, f(±1) = 1/2, |x| < 1 ⇒ f(x) = 0, 従って x = ±1 で不連続, それ以外では連続。 graph は省略。
注意:
f(x) が x = a で連続の時のみ limx→a f(x) = f(limx→a x)
という計算が許される。 連続でないときは必ずしもそうは言えない。 例えば f(x) = x sin(1/x), x ≠ 0 (x = 0 の時は f(x) =
a ≠ 0 である定数としておくと以下の話には都合がよい) とする。
このとき limx→0 f(x) = 0 だが f(limx→0 x) = a ≠ 0 だから limx→0
f(x) ≠ f(limx→0 x) である。
言い換えると f(x) が x = α = g(a) で連続で, g(t) が t = a で連続の時のみ limt→a f(g(t)) = f(limt→a
g(t)) という計算が許される。 連続でないときは必ずしもそうは言えない。 ということである。
以前 lim と log の交換可能性についてわざわざ断ったのは, このことを踏まえてのことだったわけである。