定理自体は既に 「微分 2」 の 「平均値定理」 のところで述べているが, もう一度書くと
定理 [de l'Hospital (ロピタル)]
f(x), g(x) が開区間 (a, b) で微分可能で limx→a+0f(x) = 0, limx→a+0g(x) = 0, g'(x()≠ 0 を満たすときに limx→a+0 (f'(x)/g'(x)) が存在すれば
limx→a+0 (f(x)/g(x)) = limx→a+0 (f'(x)/g'(x)).
しかし, この定理は (少なくとも大学受験では) 使うべきでないと言われている。 更に, 実はこの定理を使うのは結構面倒なので, 実は Taylor の定理を使った方が良いと私は大学で言われた。
尚, この定理の発見者は本当は de l'Hospital ではないそうである (良くあることだが)。
例:
(1) 次の極限値を求めよ: limx→1 (x3 - 1)/(x2 - 1).
(2) 次の等式が成立するように, 定数 a, b の値を求めよ:
limx→-1 (ax2 + x + b)/(x + 1) = -1.
解答: (勿論 l'Hospital の定理を用いなくても出来る。)
(1) 与式 = limx→1 3x2/(2x) = 3/2.
(2) limx→-1 (x + 1) = 0 より limx→-1 (ax2 + x + b) = a - 1 + b = 0 でなければならない。 即ち b = -a + 1. このとき l'Hospital の定理により
limx→-1 (ax2 + x + b)/(x + 1) = limx→-1 (ax2 + x - a + 1)/(x + 1) = limx→-1 (2ax + 1) = -2a + 1 = -1. 即ち a = 1. よって b = 0.
逆にこのとき与式を満たす (この場合はこの一文は必要)。
さて, ここで Taylor の定理を用いて計算した方が良い場合の例を掲げる。
函数 f(x) は x = a に於て少なくとも第二階微分係数 f''(a) を持つとするとき
f''(a) = limh→0 (f(a + h) + f(a - h) - 2f(a))/h2
を証明せよ。
証明:
「微分 2」 の 「Taylor の定理」 のところを一寸参照してもらうと, 条件から |h| << 1 (h の絶対値が充分小さい) の時,
f(a ± h) = f(a) ± f'(a)h + f''(a)h2/2 + ok(h2), limh→0 ok(h)/h2 = 0, k = 1, 2
と書けることが分かる。 従って
(f(a + h) + f(a - h) - 2f(a))/h2
= (f(a) + f'(a)h + f''(a)h2/2 + o1(h2) + f(a) - f'(a)h +
f''(a)h2/2 + o2(h2) - 2f(a))/h2
= (f''(a)h2 + o1(h2) + o2(h2))/h2
→ f''(a) (as h → 0).
勿論 l'Hospital の定理を二回使うと
limh→0 (f(a + h) + f(a - h) - 2f(a))/h2 = limh→0 (f'(a
+ h) - f'(a - h))/(2h)
= limh→0 (f''(a + h) + f''(a - h))/2 = 2f''(a)/2 = f''(a)
のように出すことも出来る。 しかし, この定理が使えるためには, a を含んだ近傍で f(x) が二階微分可能でなければならない。 上記のように, f''(a) が存在するだけでは不十分なのである。