直線の決まり方には次の二通りがある。
これらに対応してベクトル方程式も見かけ上二種類ある。
[1] 通過点 A(a) と, 直線の方向を定める (ということは直線と平行な) vector d (≠ 0) が与えられているとする。 この vector d を直線の方向ベクトル direction vector という。
直線上の任意の点を P(p) とすると, AP = p - a も亦直線の方向を定めている。 従って
AP = (p - a) || d ⇔ ∃t ∈ R(p - a = td).
従って, この直線上の任意の点 P(p) について
p = a + td
が成立する。 この式を直線のベクトル方程式 vector equation of a line という。
[2] 二つの相異なる通過点が与えられているとする。 それらを A(a), B(b) としよう。 更に直線上の任意の点を P(p) とすると, 三点 A, B, P は共線である。 従って, そこに書いた定理によって
AB || AP ⇔ (b - a) || (p - a) ⇔ ∃t ∈ R(p - a = t(b - a)).
これは [1] で求めた直線のベクトル方程式で d = b - a としたものと同一である。 さて, この式から
p = a + t(b - a)
を得る。 これも直線のベクトル方程式と呼ばれる。 更に
p = a + tb - ta
∴p = (1 - t)a + tb
であるので, これも亦直線のベクトル方程式と呼ばれる。 更にここで s = 1 - t と置けば s + t = 1 となるので
p = sa + tb, s + t = 1
とも書ける。 これも直線のベクトル方程式と呼ばれる。
この最後の直線のベクトル方程式が示しているのは, 直線上の点の位置ベクトルは, その通過点二点の位置ベクトルの一次結合のうち, 係数に特別の条件 (足して 1 になる) をつけたものであるということである。 このことが一次結合の係数の条件を変化させるときに, どのような図形を描くであろうかという考えに発展する。 これはあとで扱われる。