注: この page は font を小さくするなどして幅を広く採らないと表示が乱れます。
前の page を見ると, 二次正方行列 A について, その固有方程式 ΦA(t) = 0 が重解をもたない場合については全て考察されている。 残っているのは固有方程式が重解を持ち, しかも最小多項式と一致する場合だけである。 即ち
A - αI2 ≠ 0,
(A - αI2)2 = 0
の場合である。 以下この場合のみ考える。
( | 0 1 | )( | 0 1 | ) | = 0 |
0 0 | 0 0 |
であるから, このような行列の一つとして | ( | α 1 | ) | があることが分かる。 (この行列を上半三角行列 upper triangular matrix という) |
0 α |
(同様に | ( | α 0 | ) | も上記の二つの式を満たす。 こちらは下半三角行列 lower triangular matrix といわれる。) |
1 α |
実は, 上記の二つの式を満たす行列 A は適当な正則行列 P によって
P-1AP = | ( | α 1 | ) |
0 α |
にすることが出来る。 この過程を三角化という。 以下このことの証明。
先ず仮定から Ap = αp 即ち
(A - αI2)p = 0
となる 0 でない vector (α の固有 vector) p が存在する。 又一方仮定から, どのような vector q を採っても (A - αI2)2q = 0 であるが, これは当然
(A - αI2)(A - αI2)q = 0
を意味している。 今の二つの式から,
(A - αI2)q = kp
なる k が存在することが分かる。 従って時に k = 1 即ち (A - αI2)q = p を満たす q がある。 明らかに ¬(q || p) である。 何故なら q || p ならば q = mp となる m が存在するので (A - αI2)q = m(A - αI2)p = 0 だからである。 従って P = (p q) と置くと, これは正則行列であるが, 作り方から
Ap = αp,
Aq = p + αq
即ち
A(p q) = (p q) | ( | α 1 | ) |
0 α |
と書ける。 即ち
AP = P | ( | α 1 | ) |
0 α |
であり, 前述のように P は正則行列だから
P-1AP = | ( | α 1 | ) |
0 α |
が分かる。
定理
A を二次正方行列とし, その固有値 α は固有多項式の重解であるとする。 A が元々対角行列である場合を除けば, 固有値 α に対応する固有 vector (の一つ) を p とすると,
Aq = p + αq
を満たす vector q が存在して, P = (p q) と置くとき, この行列は正則で, しかも
P-1AP = ( α 1 ) 0 α となる。
以上により, 全ての二次正方行列は
D = | ( | α 0 | ) | か, 又は T = | ( | α 1 | ) |
0 β | 0 α |
の何れかに相似となることが分かった。
ここに書いた二種類の行列を二次正方行列の標準形 (特にこの場合は Jordan 標準形 Jordan normal form) という。 そしてこの標準形にする過程を (Jordan) 標準化 (Jordan) normalization という。