行列の標準形 2 --- その他の場合 ---


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前の page を見ると, 二次正方行列 A について, その固有方程式 ΦA(t) = 0 が重解をもたない場合については全て考察されている。 残っているのは固有方程式が重解を持ち, しかも最小多項式と一致する場合だけである。 即ち

A - αI2 ≠ 0,
(A - αI2)2 = 0

の場合である。 以下この場合のみ考える。

( 0 1 )( 0 1 ) = 0
0 0 0 0
であるから, このような行列の一つとして  ( α 1 )  があることが分かる。 (この行列を上半三角行列 upper triangular matrix という)
0 α
(同様に  ( α 0 )  も上記の二つの式を満たす。 こちらは下半三角行列 lower triangular matrix といわれる。)
1 α

実は, 上記の二つの式を満たす行列 A は適当な正則行列 P によって

P-1AP = ( α 1 )
0 α

にすることが出来る。 この過程を三角化という。 以下このことの証明。

先ず仮定から Ap = αp 即ち

(A - αI2)p = 0

となる 0 でない vector (α の固有 vector) p が存在する。 又一方仮定から, どのような vector q を採っても (A - αI2)2q = 0 であるが, これは当然

(A - αI2)(A - αI2)q = 0

を意味している。 今の二つの式から,

(A - αI2)q = kp

なる k が存在することが分かる。 従って時に k = 1 即ち (A - αI2)q = p を満たす q がある。 明らかに ¬(q || p) である。 何故なら q || p ならば q = mp となる m が存在するので (A - αI2)q = m(A - αI2)p = 0 だからである。 従って P = (p q) と置くと, これは正則行列であるが, 作り方から

Ap = αp,
Aq = p + αq

即ち

A(p q) = (p q) ( α 1 )
0 α

と書ける。 即ち

AP = P ( α 1 )
0 α

であり, 前述のように P は正則行列だから

P-1AP = ( α 1 )
0 α

が分かる。

定理

A を二次正方行列とし, その固有値 α は固有多項式の重解であるとする。 A が元々対角行列である場合を除けば, 固有値 α に対応する固有 vector (の一つ) を p とすると,

Aq = p + αq

を満たす vector q が存在して, P = (p q) と置くとき, この行列は正則で, しかも

P-1AP = ( α 1 )
0 α

となる。


以上により, 全ての二次正方行列は

D =  ( α 0 )  か, 又は T =  ( α 1 )
0 β 0 α

の何れかに相似となることが分かった。

ここに書いた二種類の行列を二次正方行列の標準形 (特にこの場合は Jordan 標準形 Jordan normal form) という。 そしてこの標準形にする過程を (Jordan) 標準化 (Jordan) normalization という。


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