無限等比級数 infinite geometric series


[定義]

無限級数のうち, 各項が等比数列になっているものを無限等比級数という。 即ち, 初項が a, 公比が r であるとすれば

Σn = 1 arn-1

のこと。 この級数を, 初項が a, 公比が r である無限等比級数という。

無限等比級数の和について考察しよう。 いつものように第 n 部分和を Sn と置く。

等比数列の和のところで述べたように, 初項が a, 公比が r の等比数列に関しては, r = 1 の場合とそうでない場合とで, 和の形が違う。

先ず r = 1 の場合は Sn = an であるから, これが n → ∞ の時に収束するとすれば, それは a = 0 の場合しかない。 普通は無限等比数列というのはこの場合を除いて考える。

r ≠ 1 としよう。 公式によって Sn = a(1 - rn)/(1 - r) である。 等比数列の極限のところで述べたように rn が収束するためには (r ≠ 1 だから) -1 < r < 1 即ち |r| < 1 でなければならない, このとき Sn → a/(1 - r) (as n → ∞) である。 これ以外の場合, 即ち r ≦ -1, r > 1 の場合は明かに発散する。

纏めると

等比級数 Σn = 1 arn-1 が収束するための必要且つ十分なる条件は |r| < 1 であり, その時の和は a/(1 - r) である。


例:

[1] 次の級数の収束, 発散を調べよ。 収束する場合にはその和 S も求めよ。

(1) Σn = 1 (1/2)n.
(2) Σn = 1 2n/3n+1.
(3) .

解)

(1) 公比 |1/2| < 1 より収束し, その和は S = (1/2)/(1 - 1/2) = (1/2)/(1/2) = 1.

(2) 2n/3n+1 = (2・2n-1)/(32・3n-1) = (2/9)(2/3)n-1 よりこれは初項 2/9, 公比 2/3 の等比級数である。 従って収束し, その和は S = (2/9)/(1 - 2/3) = (2/9)/(1/3) = (2/9)・3 = 2/3.

(3) ((√2) - 1)/((√2) + 1) = ((√2) - 1)2 = 3 - 2√2.

(5(√2) - 7)/((√2) - 1) = (5(√2) - 7)((√2) + 1) = 10 - 2(√2) - 7 = 3 - 2√2

より, 初項 ((√2) + 1), 公比 3 - 2√2 であるような無限等比級数であると推定される。

先ず 1 < 2 < 4 から 1 < √2 < 2, 故に -2 < -√2 < -1. 従って -4 < -2√2 < -2. 故に -1 < 3 - 2√2 < 1 であるからこの無限等比級数は収束し, その和は

S = ((√2) + 1)/(1 - (3 - 2√2)) = ((√2) + 1)/(2((√2) - 1)) = ((√2) + 1)2/2
= (3 + 2√2)/2.


[2] 次の無限級数は収束することを示し, その和 S を求めよ。

x2 + x2/(1 + x2) + x2/(1 + x2)2 + … + x2/(1 + x2)n-1 + ….

[3] 次の無限級数が収束するような x の値を求めよ。

(1) 1 + x(1 - x) + x2(1 - x)2 + … + xn-1(1 - x)n-1 + ….

(2) x + x(1 - x) + x(1 - x)2 + … + x(1 - x)n-1 + ….

解)

[2] i) x = 0 の場合。 各項が全て 0 であるから, 収束して和は 0.

ii) x ≠ 0 の場合。 初項 x2, 公比が 1/((1 + x2) である無限等比級数である。

x2 > 0 であるので 1 + x2 > 1. 従って 0 < 1/((1 + x2) < 1. よって収束して, 和は

S = x2/(1-1/(1 + x2)) = (x2(1 + x2))/((1 + x2) - 1) = (x2(1 + x2))/x2 = 1 + x2.

[3] (1) i) x = 0 又は x = 1 の場合。 明かに収束して, 和は 1.

ii) それ以外の場合, 即ち x ≠ 0 且つ x ≠ 1 の場合。

初項が 1, 公比が x(1 - x) の無限等比級数であるから, 収束するための条件は

-1 < x(1 - x) < 1 である。 即ち

-1 < x - x2 or x - x2 < 1
⇔ x2 - x - 1 < 0 or x2 - x + 1 > 0.

前半は (1 - √5)/2 < x < (1 + √5)/2. 後半は x2 - x + 1 = (x - 1/2)2 + 3/4 > 3/4 だからいつでも成立する。

x = 0 と x = 1 は ii) に含まれているので, 以上より, 求める条件は (1 - √5)/2 < x < (1 + √5)/2.

(2) i)  x = 0 又は x = 1 の場合。 明かに収束してその和は x.

ii) それ以外の場合, 即ち x ≠ 0 且つ x ≠ 1 の場合。

初項が x 公比が 1 - x の無限等比級数だから, 収束するための条件は -1 < 1 - x < 1 即ち -2 < -x < 0 ⇔ 0 < x < 2.

i), ii) より収束条件は 0 ≦ x < 2.


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