函数 y = f(x) の導函数は既に述べたように y' = f'(x) = dy/dx = df(x)/dx と書いた。 これも一つの函数であるから, これを更に微分することができる。 これを
(y')' = (f'(x))' = (d/dx)(dy/dx) = (d/dx)(df(x)/dx)
という意味で
y'' = f''(x) = d2y/dx2 = d2f(x)/dx2
と書く。 dx2 とは (dx)2 のつもりである。 これを函数 y = f(x) の第二階導函数 (最近は第二次導函数) という。
これを更に微分すれば y''' = f'''(x) = d3y/dx3 = d3f(x)/dx3 を得るが, これは第三階導函数 (第三次導函数) と呼ばれる。
これを更に微分して ... ということで, 第四階, 第五階, ... などなどという高階の導函数を得る。 あまり階数が高くなってくると, 書くのも読むのも大変なので, 第 n 階の導函数を
y(n) = f(n)(x) = dny/dxn = dnf(x)/dxn
と書く。 応用上大切なのは第二階の導函数であるが, それはグラフの凹凸のところで行うことにしたい。 更に, n = 0 のときは, もともとの函数 y = f(x) を表すことが多い。 場合によっては y(-1) = f(-1)(x) で ∫ydx = ∫f(x)dx を意味させることもある。
幾つか例をあげる:
[1] 自然数 m に関し, y = xm を微分していく。
y' = mxm-1, y'' = m(m-1)xm-2, y''' = m(m-1)(m-2)xm-3, .......
ここで 0! = 1, 自然数 m に関し, m! = (m-1)!×m = m(m-1)(m-2)…2×1 とする (階乗 factorial という)。 更に mPn = m!/((m - n)!) とすると
m > n の場合 y(n) = mPn xm-n = m!xm-n/((m - n)!).
m = n の場合は, 一寸考えれば, y(m) = m!. これは定数であることに注意すると
m < n の場合は y(n) = 0.
[2] y = sin x に関して, 微分公式から y' = cos x であるが, このまま微分すると大変なので, y' = cos x = sin (x + π/2) という風に思い直すことにすると, あとは合成函数の微分を用いて同様にして,
y'' = sin (x + 2×π/2), y''' = sin (x + 3×π/2), ......., y(n) = sin (x +πn/2).
[3] y = cos x に関しても, 同様にして
y' = -sin x = cos(x + π/2), ......, y(n) = cos (x +πn/2).
[4] y = log x に関しては, 先ず公式から
y' = 1/x = x-1. y'' = -1・x-2, y''' = (-1)(-2)x-3,
......,
y(n) = (-1)n-1(n-1)!x-n = (-1)n-1(n-1)!/xn.
[5] 前にも述べたように y = ex に関しては y(n) = ex.
[6] y = ax (a > 0, a ≠ 1) に関しては
y' = (log a)ax, y'' = (log a)2ax, ......, y(n) = (log a)nax.
[7] y = logax に関しては y' = 1/(x log a) = x-1/(log a) であるから, 以下は [4] と同様で
y(n) = (-1)n-1(n-1)!x-n/(log a) = (-1)n-1(n-1)!/(xn log a).
[8] a, b を定数とするとき, y = af(x) + bg(x) に関しては, すぐに分かるように
y(n) = af(n)(x) + bg(n)(x).
[9] y = f(x)g(x) とするとき nCk = nPk/(k!) = n!/((n-k)!k!) とすれば (これを二項係数 binomial coefficient という), nCk + nCk-1 = n+1Ck が成立する。 一寸話がそれすぎるので, この証明と数学的帰納法及び和の記号 Σ に関して, 準備のところに書くことにする。
積の微分公式によって
y' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x).
y'' = f''(x)g(x) + f'(x)g'(x) + f'(x)g'(x) + f(x)g''(x) = f''(x)g(x) + 2f'(x)g'(x)
+ f(x)g''(x).
以下, 簡単の為に (x) を省略する。 又上記のように f(0) = f.
y''' = f'''g + f'g' + 2f''g' + 2f'g'' + f'g'' + fg''' = f'''g + 3f''g' +
3f'g'' + fg'''.
y(n) = Σk = 0 n nCk f(n-k)g(k).
この最後の式を Leibniz の法則 (ライプニッツの法則) と呼ぶ。
最後の部分の証明
n = 1 のときは上記によって (即ち積の微分公式によって) 明らか。 y(n) の式を用いて微分すると
y(n+1) = (y(n))' = (Σk = 0 n
nCk f(n-k)g(k))' = Σk = 0
n nCk (f(n-k)g(k))'
= Σk = 0 n nCk (f(n-k+1)g(k) +
f(n-k)g(k+1))
= Σk = 0 n nCk f(n-k+1)g(k) + Σk = 0 n nCk
f(n-k)g(k+1)
= Σk = 0 n nCk f(n+1-k)g(k) + Σk =
1 n nCk
f(n-k)g(k+1)
… 後ろで i = k+1 と置く。
= Σk = 0 n nCk f(n+1-k)g(k) + Σi =
1 n+1 nCi-1
f(n-i+1)g(i)
= f(n+1)g(0) + Σk = 1 n nCk f(n+1-k)g(k) +
Σk = 1 n nCk-1
f(n+1-k)g(k)
+ f(0)g(n+1)
= f(n+1)g(0) + Σk = 1 n
(nCk + nCk-1)f(n+1-k)g(k) +
f(0)g(n+1)
= f(n+1)g(0) + Σk = 1 n n+1Ck f(n+1-k)g(k) +
f(0)g(n+1)
= Σk = 0 n+1 nCk f(n+1-k)g(k)
即ち証明された。
[10] よく引き合いに出される例 y = f(x)ex.
y' = f'(x)ex + f(x)ex = (f(x) + f'(x))ex,
y'' = (f'(x) + f''(x))ex + (f(x) + f'(x))ex = (f(x) +
2f'(x) + f''(x))ex,
y''' = (f'(x) + 2f''(x) + f'''(x))ex + (f(x) + 2f'(x) + f''(x))ex
= (f(x) + 3f'(x) + 3f''(x) + f'''(x))ex, ......,
y(n) = Σk = 0 n nCk f(n)ex.
[11] 合成函数や, 商の微分に関しては [9] の Leibniz の法則のような簡単な公式は存在しない。 例えば y = f(g(x)) では
y' = g'(x)f'(g(x)),
y'' = g''(x)f'(g(x)) + g'(x)2f''(g(x)),
y''' = g'''(x)f'(g(x)) + g''(x)g'(x)f'(g(x)) + 2g'(x)g''(x)f'(g(x)) + g'(x)3f'''(g(x))
= g'''(x)f'(g(x)) + 3g'(x)g''(x)f'(g(x)) + g'(x)3f'''(g(x)), &c.
一応 Faá di Bruno’s Formula というのが合成函数の微分公式として存在するので紹介しておく。