極限の計算の第 5 番目に掲げた内容である。 所謂受験数学で 「挟み撃ち」 という名称を用いている。 私の友人 (出題側) は 「挟み撃ちを入学試験に出していいんだったら, どんな難しい極限の計算だって出せるので汚い」 と言っていた。 つまり, 挟み撃ちを使う問題は (誘導があるとはいえ) かなり難しい。
定理
- ∀n(an < bn) ⇒ limn→∞ an ≦ limn→∞ bn.
- ∀n(an ≦ bn) ⇒ limn→∞ an ≦ limn→∞ bn.
- ∀n(an < cn < bn) ⇒ limn→∞ an ≦ limn→∞ cn ≦ limn→∞ bn.
普通 3 番目で {an}, {bn} が同一の極限値を持つ場合を挟み撃ちという。 an - bn < 0 (又は ≦ 0) だから極限のところに述べた定理から 1, 2 が言える。 従って, 3 が言える。 3 の前件 (⇒ の前) の不等号にはどちらか一方, 又は両方に等号が入っても良い。
例
(1) an = (sin n)/n.
制限函数の性質から -1 ≦ sin n ≦ 1 なので, この辺々を n > 0 で割ると
-1/n ≦ an = (sin n)/n ≦ 1/n. ここで n → ∞ とすると
0 ≦ limn→∞ an = limn→∞ ((sin n)/n) ≦ 0.
よって limn→∞ an = limn→∞ ((sin n)/n) = 0.
(2) {n/2n}.
2n = (1 + 1)n = Σr=0nnCr
… 二項定理
≧ 1 + n + n(n-1)/2 = 1 + (2n + n2 - n)/2 = n2/2 +
n/2 + 1 > n2/2 for n ≧ 2.
従って
0 < n/2n < n/(n2/2) = 2/n for n ≧ 2.
∴ 0 ≦ limn→∞ (n/2n) ≦ limn→∞ (2/n) = 0.
∴ limn→∞ (n/2n) = 0.
(3) {n2/2n}.
上記と同様にして
2n = (1 + 1)n = Σr=0nnCr
… 二項定理
≧ 1 + n + n(n-1)/2 + n(n+1)(n+2)/6
= 1 + n + (1/2)(n2 - 1) + (1/6)(n3 - 3n2 + 2n)
= 1 + (1/6)(3n2 - 3 + n3 - 3n2 + 2n)
= 1 + (1/6)(n3 + 5n) > n3/6 for n ≧ 3.
∴ 0 < n2/2n < n2/(n3/6) = 6/n for n ≧ 3.
∴ 0 ≦ limn→∞ (n2/2n) ≦ limn→∞ (6/n) = 0.
∴ limn→∞ (n2/2n) = 0.
(4) {2n/3n}.
二項定理から
3n = Σr=0nnCr2r.
≧ 1 + 2n + 22n(n-1)/2 = 1 + 2n + 2n2 - 2n > 2n2
for n ≧ 2.
∴ 0 < 2n/3n < 2n/(2n2) = 1/n.
∴ 0 ≦ limn→∞ (2n/3n) ≦ limn→∞ (1/n) = 0.
∴ limn→∞ (2n/3n) = 0.
(5) {n(sin 3n)/2n}.
|n(sin 3n)/2n| ≦ |n/2n| = n/2n で, (2) より limn→∞ (n/2n) = 0 であるから
-n/2n ≦ n(sin 3n)/2n ≦ n/2n.
-limn→∞ (n/2n) ≦ limn→∞ n(sin 3n)/2n
≦ limn→∞ (n/2n).
0 ≦ limn→∞ n(sin 3n)/2n ≦ 0.
∴ limn→∞ n(sin 3n)/2n = 0.
(6) {(-2)n/n}.
|(-2)n/n| = 2n/n で二項定理より (2) でやったように, 2n > n2/2 for n ≧ 2.
従って 2n/n > (n2/2)/n = n/2.
ここで n → ∞ の時 n/2 → ∞ であるから, 2n/n → ∞.
符号に関しては, 偶数番目と奇数番目で互いに逆符号だから, 数列 {(-2)n/n} は発散 (振動) する。
(7) {2n/(n!)}.
2n/(n!) = 2n/(1・2・3・4…n) < 2n/(1・2・3・3…3) = 4・2n-2/(2・3n-2) = 2(2/3)n-2, for n ≧ 4.
∴ 0 < 2n/(n!) < 2(2/3)n-2, for n ≧ 4.
∴ 0 ≦ limn→∞ (2n/(n!)) ≦ limn→∞ (2(2/3)n-2) = 0.
∴ limn→∞ (2n/(n!)) = 0.