その他の数列


「その他の数列」というとあまりにおおざっぱだが, 次の項目が書かれている。

  1. 階差数列
  2. S - rS 法
  3. 第 n 部分和が与えられているもの。
  4. その他
  5. 二項定理

1. 階差数列

[定義]

数列 {an} に対し bn = an+1 - an という数列を考え, この数列をもとの数列の (第一次) 階差数列 progression of differences という。 通常 {Δan} と書かれる。 (記号 Δ はギリシャ文字のデルタの大文字。)

同様に第二次階差数列 Δ2an = Δan+1 - Δan というのも考えられ, 以下同様に第 n 次階差数列 Δnan = Δn-1an+1 - Δn-1an というものが定義される。

もしも第一次階差数列 Δan が n の式で求まるならば, n > 1 の時,

an = a1 + Σk=1n-1Δak

注: Σの上端に注意。 n = 1 は別扱いであることに注意。

[証明]

a1 + Σk=1n-1Δak = a1 + (a2 - a1) + (a3 - a2) + (a4 - a3) + … + (an - an-1) = an.

一応数学的帰納法でも証明しておく。

n = 2 の時 rhs = a1 + Σk=11Δak = a1 + Δa1 = a1 + (a2 - a1) = a1 = lhs.

よって, an+1 = a1 + Σk=1nΔak を証明すればよいが
rhs = a1 + Δan + Σk=1n-1Δak = (a1 + Σk=1n-1Δak) + Δan
= an + (an+1 - an) = an+1 = lhs
で証明された。

例) 次の数列について, 一般項 an と第 n 部分和 Sn を推定せよ。

1, 2, 4, 7, 11, 16, ......

[解]

Δa1 = 2 - 1 = 1
Δa2 = 4 - 2 = 2,
Δa3 = 7 - 4 = 3,
Δa4 = 11 - 7 = 4,
Δa5 = 16 - 11 = 5,
より, Δan = n と推定される。 よって n > 1 の時

an = 1 + Σk=1n-1k = 1 + n(n - 1)/2 = (n2 - n + 2)/2.

この式は n = 1 の場合をも含んでいる (という意味は, この式に n = 1 を代入すると a1 = (1 - 1 + 2)/2 = 1 となって, もとの数列の初項と一致しているという意味である。 問題によってはこうならないときもあるので注意が必要である)

Sn = Σk=1n-1 (k2 - k + 2)/2
= (1/2)・((n-1)n(2n -1)/6 + n(n - 1)/2 + 2(n - 1))
= (1/2)・((n - 1)/6)(n(2n -1) + 3n + 12)
((n - 1)/12)(2n2 + 2n + 12)
(n - 1)(n2 + n + 6)/6.

注: ここで求めた一般項は実は補間公式で求めたものと同じである。

実は上の例において Δa1 = 1, Δ2a1 = 1, Δna1 = 0, n > 2 が分かるので,

an = a1 + Δa1(n - 1) + Δ2a1(n - 1)(n - 2)/2
= 1 + (n - 1) + (n - 1)(n - 2)/2
= (2 + 2(n - 1) + (n - 1)(n - 2))/2
= (2 + 2n - 2 + n2 - 3n + 2)/2 = (n2 - n + 2)/2.

というように, Newton の補間公式から簡単に求まる。

このように, 実は階差数列からもとの数列を復元する方法は Newton の補間公式をなぞっているのに過ぎず,

an = a1 + Δa1(n - 1) + Δ2a1(n - 1)(n - 2)/2 + … + Δka1(n - 1)(n - 2)…(n - k)/(k!)

となる (但し {Δk+1an} = {0} の場合。 勿論, 階差数列はいつか {0} になるとは限らないので, Newton の補間公式だけから全てが求まるわけではない)。 ここで階乗 ! についてはここを参照のこと。再掲すると 0! = 1, 自然数 m に関し, m! = (m-1)!×m = m(m-1)(m-2)…2×1.

上記で
注: Σの上端に注意。 n = 1 は別扱いであることに注意。
と書いたのは間違いではないが,
片岡洋氏から, 次の式を用いれば, n = 1 を別扱いにする必要がないという指摘を受けた。 感謝してここに掲載する (23:04, Wednesday, 2nd January, 2008)

an = a1 + Σk=1n Δak - Δan

明らかにこの式は n > 1 のときは, 前に掲げた式と一致しているし, n = 1 とすれば

lhs = a1 + Σk=11Δak - Δa1 = a1 + Δa1 - Δa1 = a1

となるのだから確かに n = 1 のときも常に満たしている。
尚, 氏の発見日時は 26th August, 2000 で 16:00 頃のことだという記述がある。


2. S - rS 法

これは 「等比数列とその和」 のところで一寸述べたものであるが, 一般的には述べ難いので, 例を一つ挙げて, 方法論を分かってもらうことにする。

例) Sn = 1・2 + 2・22 + 3・23 + … + n・2n を計算して簡単にせよ。

[考察]

これは, (等差数列)×(等比数列) という形をした数列の第 n 部分和であると考えられる。 そこで, 等比数列の部分の公比 2 を掛けて, これから引いてみるということをする。 やってみると上手くいくことが分かる。

[解]

でこの右辺の (初項が含まれているのは単なる偶然であるが) 初項から第 n 項までは, 初項 2, 公比 2 の等比数列であるから, 公式によって

-Sn = 2(2n - 1)/(2 - 1) - n・2n+1
= 2n+1 - 2 - n・2n+1
= -(n - 1)・2n+1 - 2.

よって Sn = (n - 1)・2n+1 + 2.


3. 第 n 部分和が与えられているもの。

これは既に 「等差数列とその和」 のところで述べたものである。

第 n 部分和 Sn が与えられているとき

a1 = S1,
an = Sn - Sn-1, n > 1.

勿論これは, Sn = Σk=1nak だから, Σ の定義 Σk=1nak = an + Σk=1n-1ak, n > 1 を書き換えたものに過ぎない。

例を二つばかりあげよう。

(1) 第 n 部分和が Sn = n2 の時, もとの数列の一般項 an を求めよ。

[解]

a1 = S1 = 12 = 1.

n > 1 の時
an = Sn - Sn-1 = n2 - (n - 1)2 =(n + (n - 1))(n - (n - 1)) = 2n - 1.

この式は n = 1 の場合をも含んでいる。

(2) 第 n 部分和が Sn = 2n の時, もとの数列の一般項 an を求めよ。

[解]

a1 = S1 = 21 = 2.

n > 1 の時
an = Sn - Sn-1 = 2n - 2n-1 = 2・2n-1 - 2n-1 = (2 - 1)2n-1 = 2n-1.

(こちらの場合は, n = 1 の場合を含んでいない。 解答を書く時は, 場合分けして列記するしかない)


4. 一般項が和の形をしているもの。

この手の問題は嫌いだといっておきながらなんだが...。

(1) 数列, 9, 99, 999, 9999, ...... の一般項 an 及び第 n 部分和 Sn を求めよ。

[解] an = 10n - 1 と推定される。

Sn = Σk = 1 n ak = Σk = 1 n (10k - 1) = Σk = 1 n 10k - Σk = 1 n 1
= 10(10n - 1)/(10 - 1) - n = 10(10n - 1)/9 - 9n/9
=(10n+ 1 -9n - 10)/9.

(2) 数列 1, 1 + 2, 1 + 2 + 3, 1 + 2 + 3 + 4, ...... の一般項 an 及び第 n 部分和 Sn を求めよ。

[解] an = 1 + 2 + 3 + … + n = Σk = 1 n k = n(n + 1)/2.
∴Sn = Σk = 1 n(k(k + 1)/2) = (1/2)Σk = 1 n(k(k + 1))
= (1/2)(n(n + 1)(n + 2)/3) … 和の記号 Σ とその公式の例 (1)
= n(n + 1)(n + 2)/6.


5. 二項定理

一寸関係ないが, ついでだから, ここで二項定理 binomial theorem を紹介しておく。

先ず上記にも述べたが, n ≧ 0, n ∈ Z に関して

0! = 1,
n! = (n-1)!×n = n(n-1)(n-2)…2×1

を n の階乗 factorial という。

nCr = n!/(r!(n - r)!), n, r ∈ Z, n ≧ 0, 0 ≦ r ≦ n を二項係数 binomial coefficient という。

二項係数の性質:

  1. nC0 = nCn = 1.
  2. nCr = nCn-r.
  3. n+1Cr+1 = nCr + nCr+1, 0 ≦ r ≦ n - 1.

[証明] rhs = right hand side, lhs = left hand side.

1. nCn = n!/(n!(n - n)!) = n!/(n!・0!) (= nC0) = 1.

2. rhs = n!/((n - r)!(n - (n - r))!) = n!/((n - r)!(n - n + r)!) = n!/((n - r)!r!) = lhs.

3. rhs = n!/(r!(n - r)!) + n!/((r + 1)!(n - (r + 1))!)
= (r + 1)・n!/((r + 1)!(n - r)!) + (n - r)・n!/((r + 1)!(n - r)!)
= ((r + 1) + (n - r))・n!/((r + 1)!(n - r)!)
= (n + 1)!/((r + 1)!((n + 1) - (r + 1))!) = lhs.

この三番目の性質を用いて, 次の二項定理が証明される。

[定理]

n∈ Z, n ≧ 0 に対し, 次式が成立する。

(x + y)n = Σr=0nnCrxn-ryr.

[証明] 数学的帰納法による。

n = 0 の時は両辺とも 1 となって成立している。

(x + y)n+1 = (x + y)n・(x + y) … 冪乗の定義
= Σr=0nnCrxn-ryr(x + y) … 帰納法の仮定
= Σr=0nnCrxn-ryr・x + Σr=0nnCrxn-ryr・y … 分配法則
= Σr=0nnCrxn-r+1yr + Σr=0nnCrxn-ryr+1 … 指数法則
= Σr=0nnCrxn+1-ryr + Σr=0nnCrx(n+1)-(r+1)yr+1.

さてここで, 後ろの方だけ, k = r + 1 と置き換えると

lhs = Σr=0nnCrxn+1-ryr + Σk=1n+1nCk-1x(n+1)-kyk.
= nC0xn+1-0y0 + Σr=1nnCrxn+1-ryr + Σk=1nnCk-1xn+1-kyk + nCnx(n+1)-(n+1)yn+1
= xn+1 + Σr=1nnCrxn+1-ryr + Σk=1nnCk-1x(n+1)-kyk + yn+1
= xn+1 + Σr=1n(nCr + nCr-1)xn+1-ryr + yn+1 … 分配法則

第二項で i = r - 1 と置くと

lhs = xn+1 + Σi=0n-1(nCi+1 + nCi)xn+1-(i+1)yi+1 + yn+1
= xn+1 + Σi=0n-1n+1Ci+1xn+1-(i+1)yi+1 + yn+1 … 上記の公式 3.
= n+1C0xn+1-0y0 + Σi=0n-1n+1Ci+1xn+1-(i+1)yi+1 + n+1Cn+1x(n+1)-(n+1)yn+1

ここで再び r = j + 1 と置くと

lhs =  n+1C0xn+1-0y0 + Σr=1nn+1Crxn+1-ryr + n+1Cn+1x(n+1)-(n+1)yn+1
= Σr=0n+1n+1Crxn+1-ryr = rhs.


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