直線の方程式


空間の位置ベクトル

既に平面の時の位置ベクトルの page で述べたようなことは, 三次元空間でも同様に考えられる。 即ち, 一つの原点と呼ばれる点 O を定めると, vector a を定めることと, a = OA なる点 A を定めることとは同値であり, 対応 A → a は一対一である。 従って vector を座標のように考えることが出来て, 点 A を定める vector を a とするとき, この vector a を (原点 O に関する) 点 A の位置ベクトルといい, A(a) と書く。

そして AB = b  - a が成立する。 このことは全空間の次元には拠らない。


直線の vector 方程式

1. 原点を通る場合

前の page で述べたように V2 に於ける本質的な部分空間は一次元の部分空間 Ra であり, これが原点を通る直線である。 平面の時の直線の方程式に述べたように, これは a を方向ベクトルとする原点を通る直線を表していることが分かる。

同様にして a ≠ 0 とするとき, Ra という部分空間を V3 で考え, これを a を方向ベクトルとする原点を通る直線と呼ぶ。 集合論的に Ra = {ta| t ∈ R} であるから

pRa ∃t ∈ R(p = ta)

と書ける。 即ち p = ta であり, これを原点を通る, 方向ベクトル a の直線のベクトル方程式といい, t を媒介変数という。

2. 一般の場合

0 でない vector d に平行で, 点A(a) を通る場合を考えよう。 直線上の点 P(p) に関し, 平行移動して P'(p - a) を考えれば, これは原点を通る直線になっているので, 上記より p - a = td 即ち

p = a + td.

これは平面の時と全く同じ形をしている。 即ち直線のベクトル方程式は全空間の次元に拠らない。

同様にして二点 A(a), B(b) を通る直線のベクトル方程式

p = sa + tb, s + t = 1

という形で表すことが出来る。

3. 直線の方程式の媒介変数表示

行ベクトル列ベクトルの所で述べたように, この節では列ベクトルとして vector を表すことにする。 P(x, y, z), d = (d1, d2, d3), a = (a1, a2, a3) とすると上記より

( x )  =  ( a1 )  + t ( d1 )  =  ( a1 )  +  ( td1 )  =  ( a1 + td1 )
y a2 d2 a2 td2 a2 + td2
z a3 d3 a3 td3 a3 + td3

となる。 即ち

x = a1 + td1,
y = a2 + td2,
z = a3 + td3

と表される。 これを直線の方程式の媒介変数表示という。

平面の時の直線の方程式に述べたように, A(a), B(b) の時 d = b - a とすれば良いので

x = a1 + t(b1 - a1),
y = a2 + t(b2 - a2),
z = a3 + t(b3 - a3)

とも表される。 これも直線の媒介変数表示と呼ばれる。

4. 直線の方程式の一般形

4.1 最初に d1d2d3 ≠ 0 の場合を考えよう。 3 で作った最初の方の直線の方程式の媒介変数表示から

x - a1 = td1,
y - a2 = td2,
z - a3 = td3

であるから t = (x - a1)/d1 = (y - a2)/d2 = (z - a3)/d3 となる。 このようにしてえられた方程式

(x - a1)/d1 = (y - a2)/d2 = (z - a3)/d3

d = (d1, d2, d3) を方向ベクトルに持ち, 一点 A(a) を通る直線の方程式 (の一般形) という。

4.2 しかし例えば d1 = 0 の時は上記のような形には書けない。 この時は媒介変数表示で見ると

x - a1 = 0,
y - a2 = td2,
z - a3 = td3

という事だから, d2d3 ≠ 0 と仮定すればこの時, 直線の方程式として

x = a1, (y - a2)/d2 = (z - a3)/d3

を得ることになる。

これは右図に見られるように, 平面 x = a1 の中にある直線を示していることになる。

その他の方向ベクトルの成分のうちの一つだけが 0 の場合も同様である。

4.3 今度は d = (0, 0, d3) ≠ 0 の場合を考えよう。 上記と同様にして

x - a1 = 0,
y - a2 = 0,
z - a3 = td3

となっているが, 最後の式, 即ち z - a3 = td3 は t が他の方程式との関連を何ら持っていないので, 要するに 「z は何であってもいい」 ということをいっているに過ぎないので, 書かなくても同じことである。 即ちこの方程式は

x = a1, y = a2

を表している。 これは z 軸に平行な直線を表している。


次へ
三次元空間の vectors の目次